ウォッチメン |
これは、ＤＣコミックスのアラン・ムーア原作の同題のグラフィック・ノベルを映画化したもの。
スーパーヒーローが実在した近代アメリカを舞台とした、壮大なスケールの物語です。
映画化は不可能、とされてきたこの物語の映画化に挑んだのは、「３００」のザック・スナイダー。
スーパーヒーロー・「ウォッチメン」の存在するアメリカ、１９８５年。
５選を果たしたニクソン大統領が、未だ政権を握っていた。
スーパーヒーローたちは、キーン条例によって活動を禁じられて治安は悪化し、人々は、緊張を高める冷戦下、ソ連との全面核戦争の危機に怯えていた。
そんなある日、マンハッタンの高級マンションで、「ウォッチメン」のひとり、“コメディアン”が何者かに殺害される。事件を知った「ウォッチメン」のひとり、“ロールシャッハ”は、そこに陰謀のにおいを嗅ぎつける。
誰かが、何かの目的で、スーパーヒーローを抹殺しようとしている・・・
主人公の周り比較的小さな世界観のマーベルコミックのヒーローに較べ、ＤＣコミックは物語のスケールが大きい傾向にあります。
その中でも、この「ウォッチメン」は、その世界観の独自さと、壮大なスケールで、過去幾度もあった映画化企画を挫折させて来ました。
アラン・ムーア原作では「リーグ・オブ・レジェンド」や「フロム・ヘル」が映画化されており、過去、ポール・グリーングラスや、テリー・ギリアムと言った有力な監督が着手してはいるのですが・・・
（そうしてもたついている間に、「ウォッチメン」の設定使って、ピクサーは「Ｍｒ．インクレディブル」を作ってしまうし）
それを、ザック・シュナイダーは見事に映画化。
アメリカ史の中に、物語を編み込む、と言うのは「フォレスト・ガンプ」がやりましたが、こちらは架空のアメリカ近代史を作ってしまうのです。
この力技も大したものだし、細部にまでリアリティを追求し、物語の情報量が異様に多いのもいかにもコミック風。
一方で、アメコミとしての持ち味を最大限に活かした映像、それに日本のアニメの影響が大きいと思われる、緩急取り混ぜた、独自の演出で、従来のアニメとも単なる実写とも異なる独自のスタイルを生み出しています。
タメを作り、決めポーズまで決まったアクション・・・これが、なんともスタイリッシュで格好いいのです。
また、コミック映画化とは言え、これは思いっ切り大人向け。エロにグロにバイオレンス描写はかなり過激。まぁ、これは日本のコミックなら当たり前ですし、ザック・シュナイダーも前作「３００」でもやってはいる事ですが、日本でもＲ１５になってしまいました。
あまり名の知られた俳優は出ていませんし、原作の「ウォッチメン」自体、日本では知名度が高くない、と言う事で、いささかアピール度は弱いものの、映画の出来映えは素晴らしい。
これは面白いし、見応えがあります。
コミックの映画化、ここまで凄いものが出来るんだなぁ・・・最近、日本でもコミックの映画化作品が多く作られているけれど、これは日本の映画もうかうかしていられないのではないでしょうか。
（４月３日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
ザック・スナイダー
■出演
“ロールシャッハ” ・・・ ジャッキー・アール・ヘイリー
（その他のキャスト）
パトリック・ウィルソン ビリー・クラダップ マリン・アッカーマン マシュー・グード
ジェフリー・ディーン・モーガン カーラ・グギノ スティーヴン・マクハティ クリント・カールトン
グレン・エニス ドン・パイン アポロニア・ヴァノワ ダリル・シェーラー ニアル・マター
ローラ・メンネル マット・ブルーワー ダニー・ウッドバーン ロバート・ウィスデン
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