ＧＯＤＺＩＬＬＡ
ゴジラ
これは、日本が世界に誇る怪獣「ゴジラ」、久々の新作映画。
日本では「ゴジラ ＦＩＮＡＬ ＷＡＲＳ」より１０年、ハリウッド版の「ＧＯＤＺＩＬＬＡ」より１６年と言う歳月を経ての復活となります。
監督は、イギリス人でゴジラ・マニアを自認するギャレス・エドワード。
１９９９年、アメリカ人研究者ジョー・ブロディは、日本で起きた原発事故で妻を失った。
それから１５年が過ぎ、ジョーの息子、フォードは米海軍の将校となっていた。
久々の休暇で、妻子の待つサンフランシスコに戻ったフォードの元に、父、ジョーが日本で逮捕された、との連絡が入った。
身元引き受けの為に日本に向かったフォードに、ジョーは「“あれ”は事故ではなかった」と語り、フォードと共に原発事故による避難指定区域に向かうのだが……
１９９８年のローランド・エメリッヒ監督による「ＧＯＤＺＩＬＬＡ」は、ファンを失望させるものでした（あれじゃ「ゴジラ」ではなく、「原子怪獣現る」だ）が、これはちゃんと「ゴジラ」になっています。
ただ、科学技術に溺れ驕り高ぶった人類への怒りの象徴として描かれた１９５４年の「ゴジラ」より、「怪獣総進撃」のような複数の怪獣が登場し、ヒーローと化したゴジラが活躍する作品群が好きだと語るギャレス・エドワード監督は、ゴジラを、怒り暴れる破壊神ではなく、地球の生態系を守る守護神として描きました。
そうした設定のせいか、同様の背景を持たされた平成「ガメラ」シリーズにも似た印象を持ってしまいました。
（そう言えば、敵役のムートーは、何となくギャオスに似ています）
また、「ゴジラ」第一作のゴジラ上陸による東京炎上は、東京空襲のイメージでしたが、この映画での災厄のイメージは、地震、原発、そして津波……３．１１後の災厄のイメージとしては、確かに妥当なものでしょうけれど、日本人としてはいささか複雑な想いを抱かされました。
「ゴジラ」と言えば、“核の恐怖”がその背景にありますが、今回の敵役怪獣・ムートーには、それを上手く活かせていたように思います。
人間の核利用と共に甦り、増殖しようとするムートーは、核と、その拡散の恐怖を形にしたもの、と言えるのではないでしょうか？
そして、己のエネルギー源を確保するため、と言うゴジラがムートーと戦う理由をつけ、それを理解してゴジラにムートーを排除させようとする芹沢博士と、あくまで核で怪獣を倒そうと言うアメリカを対比させたのも上手い。
ギャレット・エドワード監督はイギリス人らしく辛辣で、アメリカ軍人を徹底的に無能として描きます。
（無茶な作戦は立てる、現場の兵士は民間人を巻き込みそうになっているのにバンバン撃つ）
それは主人公であるフォードにも当てはまり、役には立たないわ、将校と思えない程に無責任だわ、と呆れるような描写が続くのは如何なものか、と思いましたが……まぁ、この映画の主人公はゴジラであり、そしてその理解者である芹沢博士なのだから、それでよいのかも知れません。
気になったのは、これもまた核の威力を過小に描いていること。
米軍が「怪獣３匹をまとめて吹き飛ばす」為に用意したメガトン水爆をサンフランシスコ湾で爆発させ、そのキノコ雲を目前としながら無傷で済んだフォードの描写にはさすがに呆れるしかありません。
これじゃ、“核の恐怖”の象徴であるゴジラのテーマが台無しでしょうに……これはさすがに受け入れられませんでした。
（「ダークナイト ライジング」と同じじゃないか）
肝心のゴジラの描写は、首が短くずんぐりした印象はあるものの、オリジナルの雰囲気とリアリティを適度にバランスさせたもの。
また、ＣＧでありながら“中の人”がいそうなプロモポーションに拘った辺りも、オリジナルへのリスペクトを感じます。
ゴジラをなかなか見せず、出て来ても部分だったり、低解像度だったりで引っ張り、全身を見せて咆吼を聞かせるのは映画開始から１時間と言うやり方も、往年の怪獣映画のスタイルですし、怪獣を見せる時には見上げるようにし、更に手前に対象物を置いて巨大さを感じさせるなど、円谷特撮の手腕の延長線上にある見せ方も嬉しい。
ギャレス・エドワーズ監督は、デビュー作の低予算算映画「モンスターズ／地球外生命体」の次がこの大作映画。敷居の高い「ゴジラ」のリメイクと言う難物を、映画２作目と言う僅かなキャリアでモノにしたそれは大したものだと思います。
どうやら、２作目の製作も決定した（次はラドンにキングギドラとモスラまでがが出ると言う……「大怪獣総攻撃」か？）そうですが、これは期待出来るのではないか、と思います。
（２０１４年 ７月３１日 １０９シネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
ギャレス・エドワーズ
■出演
フォード・ブロディ ・・・ アーロン・テイラー=ジョンソン
ジョー・ブロディ ・・・ ブライアン・クランストン
芹沢猪四郎 ・・・ 渡辺謙
（その他のキャスト）
CJ・アダムズ エリザベス・オルセン カーソン・ボルデ サリー・ホーキンス ジュリエット・ビノシュ
デヴィッド・ストラザーン リチャード・T・ジョーンズ ヴィクター・ラサック 山村賢 ヒロ・カナガワ
宝田明
■コピー
世界が終わる、ゴジラが目覚める。
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