マン・オブ・スティール
これは、アメコミヒーローの代表にして、最高のヒーロー、スーパーマンの劇場版新作。
製作は「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン、監督は「３００」や「エンジェル・ウォーズ」のザック・スナイダーと言うことで、これは従来の明るく健全な「スーパーマン」とは一風変わったダークな仕上がりを期待させます。
滅亡に瀕したクリプトン星で、ジョー・エルの息子として生まれたカル・エルは、クリプトンの滅亡寸前に地球へと送られる。
彼を拾ったジョナサンとマーサの夫妻の元で、クラーク・ケントの名で育てられたカル・エルだが、成長するにつれ、特殊能力が覚醒。それを隠して生きて行こうとするため、周囲にも打ち解けず孤独な青年に成長して行った。
やがて、自分探しの放浪の旅を続けるうち、彼は北方の地で“あるもの”に出会って・・・
映画「スーパーマン」と言えば、１９７８年に第一作が公開された、クリストファー・リーヴ主演の４部作が決定版。
その続編と言う位置づけの「スーパーマン リターンズ」が不発だったせいもあり、この新作は、仕切り直しのリブート作品として作られ、４部作の１作目と２作目をひとつにしたような物語になっています。
映画に漂う、暗く冷たい雰囲気は正に“ノーラン風味”と言った感じ。
人に話せぬ出生、力あるものの苦悩・・・そうした葛藤も描かれ、ドラマの厚みもしっかりした大人向けの内容になっています。
しかし、やはり目を引くのはザック・スナイダーならではの映像でしょう。
日本のアニメの影響を強く受けた、独特の緩急のリズム（所謂“タメを作る”と言う手法）が持ち味のザック・スナイダーの映像演出ですが、この映画でもやってくれます。
スーパーマンの飛行シーンで、音速を突破すると衝撃波がリング状の雲を作り、音を超えているので飛翔音が後から届く・・・と言う演出にはしびれました。
そして、超人同士の殴り合い・・・機関車よりも強い、数万馬力のパワーの繰り出すパンチとはどんなものか。並みの人間なら消し飛んでしまうでしょうが、超人ならば肉体は持つ。でも、そんなパンチを受け止めたら身体はすっ飛んで地平線の彼方に飛んで行くか、建物に当たれば人体型の穴が空いて突き抜けてしまうし、地面に踏ん張ったら足が地面にめり込んでしまう・・・そんな「ドラゴンボール」で描かれたような描写を、この映画は実写でやってしまうのです。
これぞ、ザックの真骨頂でしょう。
しかし、幾つか気になる点もあります。
そのひとつが、ロイス・レインのキャスティングで、演じるのがエイミー・アダムスと言うこともあって、クラーク・ケントよりも大分年上の印象。
これは次回作（あるとすれば、ですが）以降の展開が気になる所。
そして、一番気になったのが、最後のゾッド将軍との戦い。
大迫力の空中格闘が延々と続き、いささか長い印象もさることながら、崩壊するビル群の下で、瓦礫に埋もれた市民の悲鳴に構わず戦い続ける姿に、どうにも違和感を感じてしまいました。
しかも、最後の最後で判るのですが、スーパーマンはゾット将軍を本気で倒そうとはしていないのです。
（市民を目の前で殺されそうになって、漸く本気になる）
それまでの破壊と市民の犠牲は何だったのか、これが、ヒーローの中のヒーロー、スーパーマンの戦いなのか・・・そんな釈然としない気分になってしまいました。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
クラーク・ケント／カル・エル／スーパーマン ・・・ ヘンリー・カヴィル
ロイス・レイン ・・・ エイミー・アダムス
ゾッド将軍 ・・・ マイケル・シャノン
（その他のキャスト）
ダイアン・レイン ラッセル・クロウ アンチュ・トラウェ ハリー・レニックス リチャード・シフ
クリストファー・メローニ ケヴィン・コスナー アイェレット・ゾラー ローレンス・フィッシュバーン
ディラン・スプレイベリー クーパー・ティンバーライン リチャード・セトロン マッケンジー・グレイ
ジュリアン・リッチングス
■コピー
誰もが知るヒーローの、誰も知らない誕生の瞬間。
■Ｌｉｎｋ
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