パッチギ！ ＬＯＶＥ＆ＰＥＡＣＥ
これは、”毒舌監督”の井筒和幸による「パッチギ！」の続編。
映画は、前作の６年後の１９７４年の東京を舞台に始まります。
難病の筋ジストロフィと診断された息子、チャンスの治療のため、アンソンは家族と共に東京へと引っ越していた。
東京で、親戚の焼肉屋で働いていたキョンジャは、芸能プロダクションの男に声をかけられ、タレントとしてデビュー。持ち前の頑張りと、気の強さもあって、順調にステップアップしていく。
一方、チャンスにアメリカでの先進治療を受けさせるべく、アンソンは高額の治療費を工面する為、ツテを頼って”北”との闇取引に手を出すが・・・
前作のヒットにより、映画は全体的にスケールアップ。
物語の舞台と、時代にも広がりが出、ドラマはより重厚に、濃厚になりました。
主要キャストは、変わってしまいましたが、これは物語の内容からしてやむを得ない所でしょう。
とは言え、さすがは井筒監督と言うべきか、世の中に対する皮肉と毒舌に満ちた語り口は健在。
７０年代の芸能界をリアルに、皮肉混じりに描いた辺りは、面白くも興味深く、石原都知事が製作総指揮にあたった某映画を、映画の中で当てこする辺りもいかにも井筒監督らしい所。
パワフルなのも相変わらずの美点ですが、物語が雑なのも相変わらずなのは困ったもの。
不治の病のチャンスが、いつの間にか快方に向かっていってしまう、妙に甘口なエンディングには疑問を感じずにはいられません。
娯楽作として、ハッピーエンドが欲しかったのかも知れませんが、ここは、病魔に蝕まれ、祖国にも戻れず、それでも生きて行かねばならない、そうしたほろ苦い前向きさこそが、この物語には必要だったのではないでしょうか？
映画が描いていくのは、アンソンとキョンジャの兄妹と、家族の逞しく生きる姿。
そこにキョンジャに恋する日本人青年を絡めて・・・と言う構成は、前作と同じです。
ただ、あくまで日本人青年が中心だった前作に対し、今回の映画は、アンソンとキョンジャ中心の映画になっています。
それ故、物語が在日朝鮮人の立ち位置に寄り、中立性を失っているのです。
その結果、この映画は、日本人を敵視するようになっているのです。
これは・・・気になる人は気になるでしょう。
（はらはちょっと気になりました）
確かに、毒舌は井筒監督の持ち味ではあります。
他人に向けられる毒舌は、時に面白くもあるけれど、毒舌は、それが自分に浴びせられる時、決して愉快なものではありません。
井筒監督は、この映画で、その毒舌を、観客の大半を占めるであろう日本人に浴びせてしまっているのです。
（５月２５日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
井筒和幸
■出演
アンソン ・・・ 井坂俊哉
キョンジャ・・・ 中村ゆり
佐藤政之・・・ 藤井隆
（その他のキャスト）
西島秀俊 風間杜夫 キムラ緑子 手塚理美 キム・ウンス
今井悠貴 米倉斉加年 馬渕晴子 村田雄浩 ラサール石井
杉本哲太 麿赤兒 でんでん 寺島進 国生さゆり 田口浩正
すほうれいこ 宮川大輔 山本浩司 松尾貴史 清水優
岩崎敦子 桐谷健太 粟野史浩 土平ドンペイ 田中要次
徳山昌守 浜田学 菅原大吉 堀江慶 長原成樹 田中哲司
日向丈 愛染恭子 木下ほうか 金田敦 並樹史朗 竹下明子
鎌田愛 吉田千晃 久ヶ沢徹 川村亜紀 松永京子 ソン・チャンウィ
イム・クミョン パク・ヨンソ チャン・ジョンシク チェ・ウク
パク・ソヒ 新屋英子 中村有志 温水洋一 木村祐一
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