これは、アーケードゲームの裏側の世界を描いた２０１３年のディズニー・アニメ「シュガー・ラッシュ」の続編。
　監督は「シュガー・ラッシュ」「ズートピア」のリッチ・ムーアと、両作で脚本家としてコンビを組んだフィル・ジョンストン。

　心優しい悪役キャラのラルフと、「シュガー・ラッシュ」の天才レーサーのヴァネロペは大親友。
　ある日、ラルフの思いつきがきっかけでヴァネロペのアーケード・ゲーム機が故障。ラルフは、壊れたゲーム機の部品を手に入れるため、ヴェネロペと共にインターネットの世界に向かう。
　見るものすべてが新鮮で刺激溢れる世界の中、ヴァネロペはエキサイティングだが危険な「スローターレース」に参戦。そこで凄腕女性レーサーのシャンクと出会い、新たな世界に夢中になるが、早く元の世界に帰りたいラルフとは次第にすれ違っていき……

　前作「シュガー・ラッシュ」は、決して成功作とは言えず、その理由のひとつとして、アメリカではアーケードゲームが日本ほど浸透していない事があったのだとか。
　本作は、その反省を踏まえ、今や誰しもが知るインターネットの世界に舞台を移し、登場するゲストキャラクターも、ゲームから映画に変えて来ました。確かに、映画を観る人は映画には関心と知識がある筈で、これならば「元ネタが判らない」と言う事はありません――奇しくも「レディ・プレイヤー１」が映画化に当たって採った策を本作も採っています。
　まぁ、そうしてあらためて見るディズニーの所有するキャラクターの豊富な事。お馴染みのディズニー・アニメに加え、ピクサー作品、「スター・ウォーズ」、そして「アベンジャーズ」……これ見よがしに投入するキャラクターにはよくぞここまで、と感心するよりも呆れてしまうほど。
　しかも、総動員したディズニー・プリンセスには、その“楽屋裏”を見せ、その定義をセルフパロディ的に語らせるわ、ヴェネロペを真似たカジュアルウェアでくつろがせるわ、とやりたい放題――ピクサー作品に登場したメリダに対しては「あの子の言う事は判らない、スタジオが違うから」と陰口囁かせるのには苦笑しましたが。更に、クライマックスではプリンセスらに活躍の舞台まで与えてしまうのですから……

　また、インターネットの世界を都市化して見せる、そのビジュアルもなかなか面白い。「ズートピア」でも、“動物たちの街”を構築したスタッフは、インターネットの都市化と言う課題にも見事に適応……東京をイメージした、と言うせいか、ちょっと既視感があったりもするのですが、これまた感心する出来映えです。
　あと、検索エンジンの先読み機能がウザいとか、イイネは貰ってもコメントは読むな、とかネット世界の“あるある”ネタもなかなかです。

　物語としては、前作が居場所のなかったラルフがヴェネロペのヒーローになる話であったのに対し、本作ではヴェネロペに比重を移し、現状に満足せず、新たな道を模索するヴェネロペと、せっかく得た居場所に安住しようとするラルフを対比させるもの――言い換えれば、“家族になる”のが前作で、“親離れ＆子離れ”を描くのが本作と言う事で、これはなかなか見事な構成です。
　ただ、心を揺さぶり、涙をも誘った前作に対し、どうにも心を動かされるようなものに仕上がっていないのは残念ですし、ギャグも小ネタばかりで、くすり、とは出来ても大笑いするようなものになっていなかったのも物足りません。（一番笑ったのは、エンドロールのおまけアニメでしたから）
　また、イーベイの落札品の支払い期限までのタイムサスペンス、クライマックスのカタストロフ、両方ともサスペンスが盛り上がらず、何とも平板な展開になっているのも気になる部分です。
　
　ほんと、物語も、ビジュアルもよく出来た映画ではあると思うのですが……それだけに、淡々とした、ある意味、薄味になっているのが勿体なく思えました。

ＰＳ
　ヴェネロペの声がハスキー……と言うよりもガラガラ声で、ちょっとイメージと違うなぁ、と思いながら観ていたのですが……そう言えば、前作は吹き替えで観たのでした。　
　

　（２０１８年　１２月３０日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

リッチ・ムーア　　フィル・ジョンストン

　■出演

ヴァネロペ　・・・　サラ・シルヴァーマン

ラルフ　　・・・　ジョン・C・ライリー

シャンク　・・・　ガル・ガドット

（その他のキャスト）
　タラジ・P・ヘンソン　　アラン・テュディック　　ビル・ヘイダー　　パメラ・リボン　　ジェニファー・ヘイル　　ケイト・ヒギンズ　　ミンナ・ウェン　　ジョディ・ベンソン
　ペイジ・オハラ　　リンダ・ラーキン　　アイリーン・ベダード　　アニカ・ノニ・ローズ　　マンディ・ムーア　　ケリー・マクドナルド　　イディナ・メンゼル
　クリステン・ベル　　アウリイ・クラヴァーリョ　　マイケル・ジアッチーノ　　ロジャー・クレイグ・スミス　　ブラッド・ギャレット　　ティム・アレン　　ヴィン・ディーゼル
　アンソニー・ダニエルズ

　■コピー

「ズートピア」のディズニーが贈る、夢の<ネットの世界>へ！

　■Ｌｉｎｋ

https://www.disney.co.jp/movie/sugarrush-ol.html

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