「インソムニア」

　今日は、多忙な状態の続く仕事の疲れで昼まで寝て、それからホムペの更新などをやってから、レイトショーの映画を観に出掛けました。
　映画は「インソムニア」。
　「メメント」のクリストファー・ノーラン監督の新作です。

　物語の舞台は、白夜の続く夏のアラスカの小さな町。
　少女が全裸死体で発見された殺人事件捜査の応援の為に、ロス市警の殺人課のベテラン刑事、ウィルと、その相棒のハップが町を訪れる。
　少女の遺留品を使って、ウィルは海辺の小屋に罠を張って犯人をおびき寄せようとする。だが、濃霧の中で犯人を見失い、ウィルはハップを誤って射殺。
　ロス市警内部で始まっていた内務調査の関係で、この事故はウィルによる意図的な“相棒殺し”と解釈される可能性がある。
　ウィルは、ハップは犯人に殺されたのだと報告し、その説明を疑うものはいないように思えた・・・ただし、一部始終を目撃していた犯人を除いて・・・

　ノーラン監督は「メメント」で注目されたにせよ、これで映画３本目のド新人。
　それが、アル・パチーノ主演のメジャー作品の作品に抜擢されたのだから、大したものではあるのだけど、そこは映画会社も、新人監督の暴走を心配したのか、今回は既存のノルウェー映画のリメイクの上に、脚本家もついて、ノーラン監督は、演出のみを手掛ける事となりました。
　（そう言えば、チェン・カイコー監督も、ハリウッド進出の第１作目は、同様にして「キリング・ミー・ソフトリー」を撮っていましたね）
　これは、ある意味、制作サイドの抜け目なさの証明なんだけど、映画から、ノーラン監督らしさを奪う結果にもなったように思います。
　実際、映画の中で時間軸を輻輳させる凝った構成を得意とするノーラン監督らしさは見られず、並のサスペンス映画になってしまったのはなんとも残念。

　タイトルのインムソニアとは不眠症の事なんだけど、この不眠症から来る幻覚や幻聴は映画の中で効果的に活かされているとは思えず、神経症的な、不安感を呼び起こす極端なクローズアップや、短いカットの挿入も、この物語では煩雑に感じるだけでした。

　ただし、どこまでが真実か判らない、まるで霧の中を彷徨うかのような物語は、ミステリーとしては上々。
　主演のアル・パチーノの抜群の存在感に、次第に精神を蝕まれていく様子（これは、アル・パチーノの十八番だけどね）の迫真の演技は、やはり見物ですし、おどおどした物腰の影に突然の凶悪さを見せるロビン・ウィリアムズの悪役ぶりもいい。
　しかし、それでも、こじんまりとまとまってしまった作品は、「メメント」の次を期待していた気持ちに応えてくれるものではなかったように思います。

　（９月７日　ＷＭＣみなとみらいにて）

［戻る］