「マルホランド・ドライブ」

　今日は、仕事で本社外出。その後で、飲みに行く、と言うのに一杯だけつき合って、それから横浜で映画観て帰って来ました。
　映画は「マルホランド・ドライブ」。
　前作「ストレイト・ストーリー」では、ある意味”らしくない”感動を与えてくれたデヴィッド・リンチ監督、今回は、いかにも”らしい”謎に満ちたミステリーです。

　ハリウッドを見下ろすマルホランド・ドライブウェイを走る１台のリムジン。
　後部シートに座る美女に、突如、助手席の男が銃を突きつけてクルマから降りるように促す。
　そこに猛スピードで走って来たクルマが激突し、２台のクルマは大破。
　ただひとり、生き残った美女は、事故の衝撃で記憶をなくし、ふらふらと遠くに見えるハリウッドの街の灯りを目指して歩き出す・・・

　映画導入部から、何となく感じる違和感。
　場面の繋がり、理論整合性などが妙にズレているような感覚に、既視感を覚え、それが「夢」で見たものだと気付いたのが中盤。
　唐突な場面転換。突如襲いかかる不安、恐怖、そして生々しいエロチックなシーン。
　これら全て、かつて夢の中で体験したものに重なります。
　以前、「沈黙のテロリスト」を夢のような、と形容しましたが、撤回します。
　あれはただ、出来が悪いだけ。デヴィッド・リンチが見せてくれたのは、本物の「夢」でした。
　その浮遊感のような、奇妙な心地よさと、これがいつか終わる事を知りつつ、いつまでも続いて欲しいような感じは、正に夢そのもの。
　そんな「夢」の世界を、スクリーンに描き出したと言う事に、ただただ感心するばかりです。

　映画の終盤３０分は、今度は、その「夢」を作り出した「現実」を描き出します。
　これを、意地悪く時間軸を入れ替えて描くものだから、観た時には混乱したけれど、後で冷静になって振り返ると、案外、判りやすい構造になっている事に気付きました。
　この「判り易さ」は、リンチ監督作品では例外的なものかも知れません。

　主演のナオミ・ワッツは、名前だけ見ると日系とも思えるのですが、見た目は、ヒッチコック映画にでも登場しそうな、ちょっと古風なブロンド美人。
　スクリーンに最初に登場した時には、快活で清純そうな感じだったのですが、どうせデヴィッド・リンチのことだから、このヒロイン、後でとんでもない目に遭うんだろうな、と思っていたら案の定、レズビアンラブからオナニーまでやらされる（これはさすがに抵抗があったらしい）羽目になってました。(^^;
　また謎の美女のローラ・エレナ・ハリングは凄いグラマー。
　清純と妖艶、この２人の違ったタイプの美女も、この映画の見所のひとつでしょう。
　
　とにかく、この映画の描く世界には、思わずはまりそうになる怪しい魅力があります。
　最近、あまり映画を繰り返し観る事はしないのだけど、この映画は、謎解きの答え合わせと、「夢」の世界に浸る為に、もう１回観てみたいような、そんな気分にさせてくれました。

　（２月２０日　横浜西口名画座にて）

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