| バケモノの子 |
これは、「サマー・ウォーズ」や「おおかみこどもの雨と雪」の細田守監督の最新作。
母親を交通事故で亡くし、離婚した父親の行方もわからず、一人で生きていこうと決意した少年・蓮。
蓮を引き取りに現れた母方の親族の元から逃げ出し、あてもなく渋谷の街を彷徨っていると、野獣のようなバケモノ・熊徹が現れ、強くなりたければ俺の弟子になれ、と誘われる。
恐ろしくなって逃げ出した蓮だったが、警官に保護されそうになり、逃げ回るうちに不思議な世界へ迷い込んでしまう。そこは、人の世界と隣接するバケモノたちの世界、“渋天街”だった……
「おおかみこどもの雨と雪」で子供の誕生と成長を描いた細田守が、この映画で取り上げたテーマは、父と子の物語。
如何にして父になり、そして、我が子に何を伝える事が出来るのかを描きます。
これには、細田守の私生活が大きく影響していると思います。
勿論、クリエイターとて人の子で、己の人生で最も関心のある事を作品に反映するのは当然でしょう。
（そう言えば宮崎駿作品にもこうした傾向が見られます）
「男は心に剣を持て」と教える父と、その剣に己がなってしまう展開は、いささか押しつけがましく、そして、さすがにクサくもあるのですが、こうした部分をさらっと嫌味無く描けてしまうのもまた細田守らしい所。
また、個人的に同じような事を父から教えられた事もあり、この展開には正直、胸が熱くなったものです。
（もっとも私の父は裁縫屋だったので、“心の刃物”はせいぜい鋏でしょうけど）
アニメ声優に頼らない豪華なキャストもまた細田守らしい所ですが、その多くが、これまでの作品にも出演した、言わば“細田組”のキャストになっているのは気になる所。まだまだ守りを固めるには早いように思うのですが……
また、キャストによっては役者の個性が鼻につく場面もあり、ちょっと気になりました。
まぁ、熊徹役の役所広司、少年期の蓮を演じた宮崎あおいなどはさすがの上手さなんですけどね。
入念なロケで再現された渋谷の街並みや、それと重なるように構築された渋天街は見事なもの（ちゃんと１０９に相当する塔まである）ですし、選ばれたテーマもよく、物語はなかなか感動的。細田作品らしい２つの世界が交錯する世界観も手慣れたものですし、持ち味のボーイ・ミーツ・ガールのシチュエイションも心地よい。これまでの細田作品と比べても上質な内容である事は間違いないと思います。
ただ、スタジオ・ジブリ作品を彷彿とさせる仕上がりには、疑問も感じました。
細田守の個性としては、もっと日常に近い描写が活きるのではないか、と思うのですが。
また、この内容でこの上映時間はさすがに短く、全体的に駆け足進行、と言う感じで慌ただしい仕上がりなのが残念。説明不足、描き込み不足も多々あるように感じられました。
もっとじっくり描いて欲しかったようにも思いますが、そうするとこの内容では３時間を越えてしまいそうなので、それは出来ない相談なのでしょうけど……
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
熊徹 ・・・ 役所広司
九太（９歳） ・・・ 宮崎あおい
九太（１７歳） ・・・ 染谷将太
（その他のキャスト）
広瀬すず 山路和弘 宮野真守 山口勝平 長塚圭史 麻生久美子
黒木華 諸星すみれ 大野百花 津川雅彦 リリー・フランキー 大泉洋
■コピー
キミとなら、強くなれる。
■Ｌｉｎｋ
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