| おおかみこども の雨と雪 |
これは、「サマーウォーズ」の細田守監督が、自ら立ち上げた「スタジオ地図」で製作した新作アニメ。
“おおかみおとこ”との子供、“おおかみこども”の子育てに奮闘する母親の姿を描きます。
大学生の花は、ある日、教室で見かけた他の誰とも違う青年と恋に落ちた。お互いに愛し合うようになったある日、青年は自分が“おおかみおとこ”だと打ち明ける。
それでも花の気持ちに変わりはなく、やがて２人の間には２人の子供が生まれた、雪の日に生まれた長女、雪。雨の日に生まれた長男、雨。
都会の片隅で幸せに暮らしていた家族だが、雨の誕生後、父親が突然の死・・・悲嘆に暮れながらも、花は２人の子供と生きて行く決意を固めるのだが・・・
結婚した事で、家族が大きくなる事の面白さ知った細田監督が、「サマーウォーズ」を撮ってから３年・・・そろそろ子育てが気になって来た細田監督の新作は、子供の成長と自立の物語。
ここに「狼男（人狼）」と言う現実離れした設定を持ち込んだのは、細田監督の知人の幼い子供を持つ母親の愚痴からだ、と言います。
「自分の子供は猛獣のよう。泣きわめくし、言葉は通じない」と、言われた事にヒントを得て、この映画、子供を半人・半獣の人狼にしてしまいました。
これは、現実に幼い子供を持つ母親が追い込まれる状況を、極端な形にしたものになりました。
正に、「子供は猛獣」で「ウチの子は余所とは違う」、そして「誰の助けも求められない」。
この難局を花がいかに乗り切って行くのかが、前半の山場になります。
そして後半は子供たちの成長と自立が描かれます。
狼として、獣として生きるのか、人として生きるのか――その選択を、花は決して押しつける事なく、自我を芽生えさせた子供たちに選ばせるのです。
そう、子供は決して親が「育てる」のではなく、子供が持つ生命力そのものによって「育つ」のだ、とこの映画は描きます。
だからこそ、自分の生きる道を選んだ息子に対する母親の最後の言葉「生きて」に感動します。
この感動的な物語、脚本は「八日目の蝉」の奥寺佐渡子。
「サマーウォーズ」もそうでしたが、女性らしさとその逞しさを描く脚本の出来は素晴らしいものがあります。
また、この物語が興味深いのが、人と獣、都会と田舎、文明と自然など、物事を対比させ、同時にその表裏を描いていること。
おてんばで暴れん坊だった雪の方が人間らしく、物静かで臆病な雨の方が、心に獣性を秘めている、と言う設定もそうですし、人の多い都会から人目を避けて田舎暮らしをした筈なのに、近所の人間関係は田舎の方が濃密だとか・・・そして、この物語は、対比したこれらに優劣をつけようとしないのです。
正に、「人狼」が具現するように、その両方が存在すること自体を認めようとしているように感じました。
足かけ１５年にも及ぶ物語を回想形式で描く構成も巧みですし、背景をＣＧで動かすなどのアニメーション技術のレベルも高い。
アニメならではの躍動感もあり、クライマックスには感動の涙と、これは見所も充分で完成度も高い。
まぁ、アニメファンにはウケないかもしれないけれど、これは「サマーウォーズ」を超えるヒットになるのではないでしょうか？
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
花 ・・・ 宮崎あおい
彼（おおかみおとこ） ・・・ 大沢たかお
雪 ・・・ 黒木華（１２歳）／大野百花（幼少期）
雨 ・・・ 西井幸人（１０歳）／加部亜門（幼少期）
（その他のキャスト）
平岡拓真 林原めぐみ 中村正 大木民夫 片岡富枝
小林隆 染谷将太 桝太一 谷村美月 麻生久美子
上白石萌音 菅原文太
■コピー
私は、この子たちと生きていく。
■Ｌｉｎｋ
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