| とらわれて夏 |
これは、 「マイレージ、マイライフ」や「ヤング≒アダルト」のジェイソン・ライトマン監督の新作。
１９８７年の夏。
アメリカ東部の田舎町でシングルマザーのアデルはひとり息子のヘンリーと暮らしていた。
夫に去られてから精神を病んでいる母を守れるのは自分だけだ、と考えるヘンリーだが、それは１３歳の少年には荷の重いことだった。
夏休み最後の週の木曜、買い物に出かけた二人は、ショッピングセンターで出会った脱獄囚のフランクに無理やり自宅へ押しかけられ、そのまま軟禁されてしまう。
「夜になったら近くの駅から列車で逃げる。それまで匿ってくれ」と言うフランクの見せる素顔は意外にも紳士的で、レイバーデイ前の週末で列車が運休となり、足止めされた彼は家の中のさまざまな力仕事を買って出るのだった……
この映画、物語の流れの中で様々な表情を見せて行きます。
まず、平和な暮らしの家に犯罪者が侵入する、と言う、緊張感を孕んだ序盤から、物語は脱獄囚の男と人質になった母親の大人のラブストーリーに路線変更。そして、それを知った少年が、更に奔放な少女と出会う展開から性の目覚めを描き、更には禁断の愛の逃避行、と言うサスペンスで盛り上げます。
そして、この映画、最終的にはヘンリーの「一夏の体験」を描く青春映画として落ち着きます。子供だった主人公は、その一夏の体験により、子供時代に決別して大人への一歩を踏み出して行くのです。
本作の原題「Ｌａｂｏｒ Ｄａｙ」とは夏休みの最後を締めくくる祝日。
夏の終わりを象徴する日となっています。この映画はそれを、様々なドラマと結びつけています。
夏休みの終わり、ふたりがフランクと過ごした僅かだけれど、満ち足りた時間の終わり、そして、ヘンリーの子供時代の終わり……
過去に幾つも類似例のある設定と思わせつつ、複雑でいてそれでいて説得力のある設定から、「思春期の少年の視点」と言う新鮮な切り口で、心動かすドラマを切り出して行く。
まだ３７歳と若いジェイソン・ライトマン監督ですが、これまでに手掛けた映画が軒並み高評価を得ている敏腕は、この映画でも冴え渡り、さすがの出来映え。これだけの要素を盛り込んで、様々な趣を見せつつ、それでも煩雑になることなく、まとめて見せるのは実に見事なものです。
一期一会の出会いが、諦めた愛を生み、壊れた心を癒やし、そして人生を変えて行く……それは、夏の終わりに現れたひとつの奇跡。
３人の心を繋いだピーチパイのようにいささか甘口ではあるけれど、心温まる大人のファンタジーです。
（２０１４年 ５月 １日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
■出演
アデル ・・・ ケイト・ウィンスレット
ヘンリー ・・・ ガトリン・グリフィス
フランク ・・・ ジョシュ・ブローリン
（その他のキャスト）
トビー・マグワイア トム・リピンスキー クラーク・グレッグ ブリード・フレミング マイカ・モンロー
アレクシー・ギルモア ルーカス・ヘッジズ ジェイムズ・ヴァン・ダー・ビーク ブルック・スミス
J・K・シモンズ ディラン・ミネット マイカ・ファウラー
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