マイレージ、マイライフ
Up in the air
これは、ジョージ・クルーニー主演の人間ドラマ。
監督は、「サンキュー・スモーキング」や「ＪＵＮＯ」など、ユーモアある社会派映画で知られるジェイソン・ライトマンで、これまた、面白くも社会の一面を映し出す、曲者映画です。
リストラ宣告請負人として、企業に代わって社員に解雇を告げることを仕事するライアンは、全米の会社を飛び回り、航空会社のマイルを貯めることに執着していた。
ところが、会社期待の新人・ナタリーが、解雇通告をテレビ電話で行うと言う提案を行った。
それは、現地に赴き、直接、社員に解雇通告を下す、と言う彼の仕事と、ライフスタイルを一変させようとするものだった。
ライアンは、自分の仕事ぶりを見せる為、ナタリーを連れて出張するのだが・・・
これは、独身者にはなかなか痛い映画。
家族の絆、そして、他者と深く繋がる事から避け、人生の大半を旅客機のシートに座って高速移動する事で過ごして来たライアン。
旅客機は彼の家であり、飛行場スタッフは、彼の家族のようなもの。
高速で動き回る為に、人生を縛る重荷の殆どを棄て、スーツケースひとつに人生を詰め込んで来ました。
それは、あたかも泳ぐことをやめたら死んでしまうサメのような生き方です。
一方、優秀な頭脳と能力を持ちながら、愛する人のそばにいたいが為に、地方在住を選択しようとするナタリーの生き方は、彼にとって理解し難いものでした。
でも、人はサメではありません。
その、自分とは余りに違うナタリーと、そして、あるきっかけから生まれた家族の絆を通じ、ライアンは、人の幸せに気づいてしまいます。
でも、掴もうとした幸せは幻に過ぎませんでした。
彼が、その「幸せ」を知ったのは遅すぎたのですし、それまでに彼は余りに長くを空に居すぎました。
あるいは、何も知らず飛び続けていた方が、彼には良かったかもしれません。
地上にあると知った幸せを遠く下に見ながら、彼は、ひときわ輝く星として人々の幸せのはるか上空を、ひとり飛び続けるしかないのです。
このライアンを魅力的に演じるのは、ジョージ・クルーニー。“少年っぽさを残したオトナの男”と言う、彼ならではの魅力全開。
しかし、ほんとに中身が「コドモ」なんだ、と言う描写は、ちょっと痛い。
その彼の愛人役のヴェラ・ファミーガは、こちらも魅力的。でも、こっちはしっかり「オトナ」なんだなぁ・・・
ライアンのような生き方は極端としても、その、他者から距離を置く生き方は、独身者には類似する部分が多いのではないでしょうか。
そして、そうした生き方が、人生に何を与え、何を奪うのか。
自分の人生を振り返って・・・やはり、痛い映画だなぁ、と思います。
（４月７日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
■出演
ライアン・ビンガム ・・・ ジョージ・クルーニー
アレックス・コーラン ・・・ ヴェラ・ファーミガ
ナタリー・キーナー ・・・ アナ・ケンドリック
（その他のキャスト）
ジェイソン・ベイトマン エイミー・モートン メラニー・リンスキー J・K・シモンズ
サム・エリオット ダニー・マクブライド ザック・ガリフィアナキス
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