ジョン・カーター
これは、１９１２年に発行されて以来、数多の作家にインスピレーションを与えた、エドガー・ライス・バロウズの伝説的ＳＦ小説「火星のプリンセス」の実写映画版。
ディズニー生誕１１０周年記念作として３億５千万ドルもの制作費を注ぎ込んだ超大作です。
監督は、「ファインディング・ニモ」、「ＷＡＬＬ・Ｅ」で知られるピクサーのアンドリュー・スタントン。監督にとって初の実写映画でもあります。
物語の始まりは１８８１年。
エドガー・ライス・バロウズは、叔父であるジョン・カーターの急逝の知らせを受け、彼の屋敷を訪ねた。
ジョンは全財産と１冊の日記をエドガーに遺していた。
「決して誰にも見せないように」と遺言に残されたその日記には、驚くべき物語が記されていた・・・
ジョン・カーターの冒険の舞台となる惑星「バルスーム」は、火星のこと。
さすがに、２１世紀のＳＦ映画で、火星に４本の腕を持つ緑色の巨人が住んでいる、と言う設定は苦しいものがありますが、何しろ、１００年前の小説ですから、そこにツッコむのは野暮と言うもの。
原題の「火星のプリンセス」こそ映画で使われませんでしたが、それでも、物語の方は、原作通りに火星の設定となっています。
映画は、最新のＶＦＸを駆使して、「火星のプリンセス」の世界を実写映像化。
確かに、ビジュアル面では工夫もあって、それなりのインパクトはありますが・・・何しろ、「火星のプリンセス」に影響を受けた作品（例えば「スター・ウォーズ」、それに「アバター」）が既に実写になっているのが厳しい。どうしても、何処かで観たような映像になってしまうのです。（こちらが本家本元ではあるのですが）
また、ディズニー映画ですから、残酷描写やお色気は控えられ、印象としては健康的。
確かに、元々、そんな物語だった、と言えばそうなのですが、この内容では、「火星のプリンセス」に心躍らせたかつての少年には物足りなく、刺激の高い物語に慣れた現代の少年には、何処かで観たような古臭いものに感じられるのではないでしょうか。
それに、出演者に華がない。
主役のジョン・カーターを演じたテイラー・キッチュは、確かにビルドアップして来てはいるものの、もう少し体格が欲しい所ですし・・・
それより問題なのはデジャー・ソリス。
原作でも確かに文武両道ではあるものの・・・演じたリン・コリンズではどう見てもアマゾネス戦士（鍛えられた二の腕など、テイラー・キッチュにも引けを取らない！）で、これでは、どう見ても「お姫様」と言うイメージでは・・・
（日本人の場合、武部本一郎画伯の描くデジャー・ソリスのイメージがあるので尚更・・・）
そんな事も影響したのか、先行して公開されたアメリカでは記録的な赤字になってしまったようで、この調子では、当初予定されていた火星シリーズ３部作（「火星の女神イサス」と「火星の大元帥カーター」）を映画館で観ることはもう望めないようです。
（２０１２年 ４月２０日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
アンドリュー・スタントン
■出演
ジョン・カーター ・・・ テイラー・キッチュ
デジャー・ソリス ・・・ リン・コリンズ
（その他のキャスト）
サマンサ・モートン ウィレム・デフォー トーマス・ヘイデン・チャーチ マーク・ストロング キアラン・ハインズ
ドミニク・ウェスト ジェイムズ・ピュアフォイ ブライアン・クランストン ポリー・ウォーカー ダリル・サバラ
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愛する家族を失い、地球から姿を消した男。彼の名は──
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