これは、９．１１の悲劇で父親を亡くした少年の喪失と再生のヒューマンドラマ。
　監督は、「リトル・ダンサー」、「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー。

　９．１１テロで父親を亡くし、母親と２人ニューヨークで暮らす少年オスカー。
　その悲劇から１年が経ったある日、彼は父親のクローゼットから小さな封筒に入ったひとつの鍵を見つける。それに合う鍵穴を見つければ、そこに父親からのメッセージがあるに違いない。
　そう思ったオスカーは、封筒に書かれた「Ｂｒａｃｋ」と言う文字だけを頼りに、この鍵穴に合う鍵を探し始める・・・

　この映画、予告編からイメージされる「聡明な少年の謎解き物語」と言うものからは大分異なる内容だと思います。
　主役のオスカーは、映画の中で「アスペルガー症候群の検査を受けた」と言っているように、軽度の自閉症を持つ、孤独な少年。
　乗り物に乗れない、エレベーターにも乗れない、パニック発症を防止するため、タンバリンを持ち歩き、それを鳴らしながら歩いています。
　最近、よく言われる「発達障害」に当たるのでしょうか？それ故の突飛な行動にちょっと戸惑いました。

　でも、物語は確かに暖かい。
　オスカーは、ただ父親ともう一度、話をしたかっただけ。だからこそ、その「最後のメッセージ」を必死になって探しました。
　でも、そうしてニューヨーク中を歩き回り、多くの人々と話すことで、孤独だったオスカーは成長して行きます。
　そして、オスカーは知るのです。
　父こそ失ったものの、自分が、母や祖父、そして多くの暖かい人に支えられていること。そして、誰もが喪失を抱えていることを。

　ラストシーン、踏み出す勇気を得、笑顔を取り戻したオスカーに感動します。
　そして、それは、９．１１以後、自閉症的になってしまったアメリカ再生を託したラストにも感じられました。　

　（月日　にて）

（作品データ）

　■監督

スティーブン・ダルドリー　

　■出演

　オスカー　・・・　トーマス・ホーン

　トーマス　・・・　トム・ハンクス
　リンダ　　 ・・・　サンドラ・ブロック

（その他のキャスト）
　マックス・フォン・シドー　　ヴァイオラ・デイヴィス　　ジョン・グッドマン　　ジェフリー・ライト　　ゾー・コードウェル

　■コピー

あの日父を失くした少年の、喪失と再生のものがたり　

　■Ｌｉｎｋ

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