「キャスト・アウェイ」

　週末、例によって休日出勤し、会社終わった後でマイカル本牧行って、先行レイトショーで観て来ました。

　現代版「ロビンソン・クルーソー」と言えば説明がつくこの映画、監督、ロバート・ゼメキス、主演、トム・ハンクスと言う「フォレスト・ガンプ」以来の組み合わせで、本年度のアカデミー賞を狙うと言う力作になっています。
　尚、主演女優にはやはりアカデミー賞受賞女優のヘレン・ハントを据え、アカデミー賞候補作として、布陣の方は万全、と言った所でしょうか。(^^;

　物語の主人公、チャックは、国際運送会社フェデックスの幹部社員。
　生き馬の目を抜くようなこの業界で、生き残りを賭けて１分１秒を削り取り、１秒でも早く荷物を送り届ける事に奔走している。
　そんな彼の口癖は、
　「時に背を向けるな！」
　です。
　これは、過ぎ去る時間を無駄にせず、その中で最大限の効率を以て仕事を進める事。つまり、時間を制御し、それに打ち勝つ事が彼の生き様なのです。
　そんな彼を乗せた飛行機が太平洋航路で遭難、たったひとり生き残った彼は絶海の孤島に漂着する。
　航路を遠く離れ、船も飛行機も近くを通らない孤島にたったひとり、チャックの生き残る為の闘いが始まります。
　石で椰子の実を割ろうとしたことから石器の作り方を覚え、苦労した挙げ句に火を起こし・・・と言う、サバイバルの苦闘ぶりは予告編でも紹介されているけれど、やはり、見応えあり。
　ただ、火を起こすシーンを予告編で紹介しちゃったのはやり過ぎだったなぁ、と思いますけれど。
　（予告で観てなきゃ、結構感動する場面かも知れません(^^;）

　主演のトム・ハンクスはさすがですね。
　力の入った演技は勿論、遭難前と後で、身体つきまで変えている辺り、やはりハリウッドの俳優は凄いと思いますね。
　（ちなみに遭難後の身体を作るのに、トム・ハンクスは２５kgものダイエットをしたそうです）
　主人公、チャックの恋人のケリー役で登場のヘレン・ハントは、出番は少ないのだけれど印象的な役。
　ただ、「ペイ・フォワード」、「ハート・オブ・ウーマン」と、この一ヶ月で３本も彼女の出演作を観ていると、さすがに食傷気味だったりします。(^^;

　この映画の中心となるのは、主人公のサバイバルを描く冒険活劇的な部分ではなく、時間との闘いをメインに、現代人が抱える「孤独」、これを描く事だと思います。

　チャックは仕事に振り回され、恋人のケリーと会う事もままならない日々を送っていた。
　無人島では、孤独ではあったけれど、サバイバル生活が軌道に乗ってからは、それこそ、日長一日、ケリーの事を考え、彼女の絵を描く事で、共にある事が出来た。
　そして、ある日、偶然、漂着したコンテナの部品を使って筏を作り出し、命辛々島から脱出して、故郷に戻ってみると、今度はそこでも孤独が待っていた、と言う具合。

　忙しさが隔てる孤独。
　距離そのものが隔てる孤独。
　そして、状況が生み出す孤独。

　果たして、そのどれが本当に不幸なのでしょうか。
　この映画は、その辺りを突きつけて来ます。

　そして、「時に背は向けない」を信条に、時間と闘って来た主人公は、時の前に人は皆、無力である事を思い知らされるのです。
　結局、人は時間を思うようにする事は出来ず、人生、その時、その時を懸命に生きるしかない。

　最後、チャックが友人に言う、
　「島ではただ息をしているだけの暮らしだった。いつか来る死を待つだけの。
　　そこに”帆”が流れて来て、島から脱出する事が出来た。
　　今も同じだ。
　　いつか流れて来る”帆”を待っている」
　と言う言葉は胸に刺さりました。

　人生を変える”帆”。
　それを見過ごす事無く生きて行きたいものではあるけれど、それはなかなか難しいことなのかも知れません。

　（２月１７日　マイカル本牧シネマズにて）

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