| 鳥 刺 し |
必 死 剣 |
これは、藤沢周平の人気時代小説、“隠し剣”シリーズの中のひとつを映画化したもの。
この中の代表作「隠し剣 鬼の爪」は既に映画化されていますし、これら、海坂藩を舞台とした時代劇は、今年だけでも「花のあと」に続き２本目。
いささか食傷気味、と言えるかもしれませんが・・・この映画、これまでとは、やや物語が異なります。
これまでの藤沢周平時代劇映画の主人公が、世の中の端の方にいたのに対し、この映画の主人公は、藩の政治の中心近くにおり、それ故に、苦悩し、やがて政治的陰謀に運命を翻弄される事になるのです。
物語の舞台は、これまでと同じ東北の海坂藩。
これまでの物語では、小さいながらも人々が穏やかに暮らせる海坂藩でしたが、この物語では少し雰囲気が異なります。
藩主の愛妾・連子が政に口を出し、藩政は乱れ、財政は悪化し、折り悪く襲い掛かって来た飢饉のせいもあり、人々の間に藩主と愛妾への不満が高まっていた。
そのような情勢下、藩で物頭を勤める兼見三左エ門は、愛妾・連子を城中で刺し殺してしまう。
妻を亡くし跡取りもいない三左エ門は打首も覚悟の上だったが、下されたのは１年の閉門という寛大な処分。
やがて閉門は解かれ、彼は再び藩主の傍らに仕えることになるが・・・
政治的陰謀に巻き込まれて行く主人公を描きながらも、この映画は陰謀の多くを語らず、繰り返し、丁寧に描かれていく、事件へと至る主人公の心情と、亡き妻の思い出、そして姪の里尾との日常が、映画の中心になっています。
その静かな描写の中で、徐々に高まる緊張と、里尾への想いを重ねる描写も上手く、それが壮絶とも言える終盤、１５分近くにも及ぶ戦いを引き立てています。
この主人公、三左エ門を演じたのは豊川悦司。いささか不器用ではありますが、この寡黙な主人公には嵌り役。
三左エ門の妻の姪役には、池脇千鶴で、元気な現代娘の彼女が、藤沢時代劇でメインキャストが務まるのか、とも思いますが・・・まぁ、「花のあと」では、完全な今時ギャルの北川景子が主役でしたからね。年齢不詳な感はあるのですが、結構、上手く演じていたのではないでしょうか。
丁寧に作られた良質の時代劇で、劇場の観客は年寄りばかりだったけど、これは幅広い観客に観られていい傑作だと思います。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
平山秀幸
■出演
兼見三左エ門 ・・・ 豊川悦司
里緒 ・・・ 池脇千鶴
（その他のキャスト）
吉川晃司 戸田菜穂 関めぐみ 村上淳 高橋和也 油井昌由樹
矢島健一 十貫寺梅軒 外波山文明 木野花 瀧川鯉昇 福田転球
俊藤光利 つまみ枝豆 建蔵 村杉蝉之介 針原滋 山田キヌヲ
広岡由里子 小日向文世 岸部一徳
■コピー
死ぬことさえ、許されない。ならば、運命を斬り開くまで。
■Ｌｉｎｋ
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