第９地区

　これはのピーター・ジャクソン監督が製作したＳＦ映画。
　「ロード・オブ・ザ・リング」、「キング・コング」と、ここ暫く大作の続いたピーター・ジャクソンにしては、今回は製作費２７億円と「低予算」の映画で、その分、かつてのピーター・ジャクソンらしい、ケレン味のある映画になっています。

　１９８２年、南アフリカ・ヨハネスブルグ上空に巨大宇宙船が出現、上空に静止したままとなる。
　中にいたのは、汚れ、疲れ果てたエビのようなエイリアンたち。彼らは、何らかの事情で故郷の星を追われた宇宙の「難民」だった。
　南アフリカ政府は、数百万ものエイリアンを、難民として、一時的に「第９地区」に受け入れ、その管理を民間のＮＭＵ社に委託。
　２０数年後。ＭＮＵは、スラム化した「第９地区」のエイリアンの強制移住を実行に移すが・・・

　エイリアンと言えども、映画の中ではちょっと遠い所から来た異邦人に過ぎません。
　敵意ある侵略者ならば軍事力で殲滅し、善意を持つ訪問者であるならば、友誼を結ぶ・・・これまで、様々な”ファースト・コンタクト”がこれまで描かれて来ましたが、概ね、こうした２つに分類出来たと思います。
　だけど、この映画は、３つめのパターンを用意して来ました。
　それは、“命からがら逃げて来た難民”だったら、と言うもの。

　これは徹底的にリアルで皮肉も痛烈。
　この映画が、「迫害され祖国を追われし者を受け入れる」と言う精神を掲げたアメリカで作られ、人種差別と長いこと戦って来た南アフリカを舞台にしているのですから。
　そうして描かれるエイリアンたちへの迫害と差別。
　映画は、エイリアンに「なってしまった」人間を通して、それを露にし、偽善という仮面を被った、真に醜い存在は誰なのかを突きつけます。
　
　ラストシーンは一見、ほのぼのとしたものに見えますが・・・これまたブラック。
　そう。地球を脱出した“彼ら”が、仲間を救う為に戻って来た時、何が起きるのか・・・

　（月日　にて）

（作品データ）

　■監督

ニール・ブロムカンプ、サイモン・ハンセン　

　■出演

（キャスト）
　シャルト・コプリー　　デヴィッド・ジェイムズ　　ジェイソン・コープ　　ヴァネッサ・ハイウッド　　ケネス・ンコースィ

　■コピー

人類、立ち入り禁止。　

　■Ｌｉｎｋ

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