ブッシュ
世界でいちばん有名な大統領は、
世界でいちばん寂しい人でした。
これは、オリヴァー・ストーン監督が、前米大統領ジョージ・Ｗ・ブッシュを描いた映画。
名門ブッシュ家に生まれたジョージ・Ｗ・ブッシュ。
祖父は上院議員で、父、ジョージ・Ｈ・Ｗ・ブッシュは、後に大統領になる優れた政治家。だが、その息子は、父親を悩ませるばかりの、典型的な良家のドラ息子だった。
大学では警察沙汰の暴力事件を起こし、卒業してからも、仕事は長続きせず、職を転々。
更に、アル中になり、飲酒運転で幾度も捕まり、薬物にも手を出した。
もっとも、出来の悪い子供ほど可愛いのか、父は自分の大統領選挙の手伝いをジョージに託すのだった。
やがて、彼は父の後を追うように、大統領になるのだが・・・
ブッシュ役には「ノーカントリー」で印象的な演技を見せたジョシュ・ブローリン。
さすがに学生時代は無理がありますが、大統領就任後は、眉間の横皺を含め、なかなか似ているのではないでしょうか。
大統領側近も、それぞれよく雰囲気を出しています。
しかも、いずれ劣らぬ演技派の巧みな演技。イラク戦争開戦前の再現は、迫真の出来だと思います。
しかし、これは、決して社会派映画ではありません。
「アレキサンダー」で、英雄アレキサンダー大王の壮大なドラマを、母と子のドラマとして描いたオリヴァー・ストーンは、この物語を父と息子のドラマにして来ました。
物語の中心は「父と子の確執」であり、そこは合衆国大統領として彼が責任を持つべき、国家や国民の姿は希薄です。
「ＪＦＫ」で見せたような社会派ぶりを期待すると裏切られますが、まぁ、「アレキサンダー」を撮ったオリヴァー・ストーンだけに、こうなるのも仕方ないかな、と言う気もします。
また、第４３代合衆国大統領としての評価も、この時点で下すには早計に過ぎ、であれば尚更、大統領としてではなく、ジョージ・Ｗ・ブッシュと言う個人を描くしかなかったのかもしれません。
もっとも、映画としてはかなり小粒。
宣伝では笑える映画のように売り込んでいますが、その内容は気楽に笑えるものではありません。
（オリヴァー・ストーンですからね。これで笑えるのは性格の悪い大人だけでしょう）
派手な見せ場もなく、盛り上がりにも欠ける印象で、中盤には眠気を催してしまいました。
（５月２２日 １０９シネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
オリヴァー・ストーン
■出演
ジョージ・Ｗ・ブッシュ ・・・ ジョシュ・ブローリン
ジョージ・Ｈ・Ｗ・ブッシュ ・・・ ジェームズ・クロムウェル
ディック・チェイニー（副大統領） ・・・ リチャード・ドレイファス
ドナルド・ラムズフェルド（国防長官） ・・・ スコット・グレン
コリン・パウエル （国務長官） ・・・ ジェフリー・ライト
コンドリーザ・ライス（大統領補佐官） ・・・ タンディ・ニュートン
トニー・ブレア （英国首相） ・・・ ヨアン・グリフィズ
（その他のキャスト）
トビー・ジョーンズ デニス・ボウトシカリス ブルース・マックギル コリン・ハンクス
エレン・バースティン エリザベス・バンクス
■コピー
世紀のＫＹ【クツよけ】男。
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