Ａｃｔ．１９ ニューヨーク
「カズキ、ここよ」
声をかけられて、一樹は思わす声のした方を振り向いた。
ニューヨークのジョン・Ｆ・ケネディ国際空港にて、税関検査を終え、到着ロビーに出た所である。
「迎えに来たわよ」
ティナ・モールトンが、サングラスを持ち上げて微笑んでいた。
一樹は、ちょっとびっくりしたが、
「わざわざありがとう」
と言った。
海外出張を幾度も経験し、英語も堪能な一樹にとって、ニューヨーク出張で、世話役や駐在員の世話になる必要はなかった。
だから、ティナがわざわざ出迎えてくれた、と言うのは、嬉しいと言うよりも恐縮する気持ちが先に立った。
なにしろ、プロジェクト・ゼロの発注者、トランプ・コーポレーションのＣＥＯが自ら出迎えてくれているのだ。
「ホテルはヒルトンをとっておいたわ。それでいいかしら？」
ティナは、当たり前のように言った。
ホクトでは、通常、社長を始めとして取締役クラスが利用するホテルだ。問題があるとすれば、課長格の宿としては贅沢に過ぎるのでは、と言う事くらいだ。
「何だか、よくして貰っていて申し訳ないような気持ちだ」
「それだけ、期待しているのよ」と、ティナは言った。「何しろ、『ゼロ・クォーター』の開業前の仕上げ点検をお願いするのだから」
今回の一樹のニューヨーク出張の目的は、「ゼロ・クォーター」で開業準備中のエクスロイド・タイプＳＸの最終点検だった。
エクスロイド・タイプＳＸの生産は、生産部門の努力にも関わらず遅れ気味で、量産開始は、当初予定の１２月から年明けにずれ込んでいた。
とにかく、１月から開業予定の「ゼロ・クォーター」１号店に間に合わせるべく、１２月の先行生産の数を増やし、何とかクリスマスまでに１２タイプ２４体を送り出した。
その状況を確認すべく、新年早々、一樹はニューヨークに飛ぶ事になったのだ。
なにしろ、初めて尽くしなので、判らない事だらけだ。
トランス・コーポレーション側も、選りすぐりのスタッフを何十人も、ホクトに送り込み、専門技術の習得に務めているのだが、何と言っても、初の試みである。スタッフの不安はどうしても拭い去る事が出来なかった。
そこで、エクスロイド・タイプＳＸの生みの親とでも言うべき一樹が、開業を控えた１号店に、オブザーバーとして送り込まれる事になったのだ。
これは、どちらかと言うと、精神的なものだった。
エクスロイドの取り扱いや、営業ノウハウなど、どう考えても一樹が専任のスタッフに勝る訳ではない。
だが、それでも、その責任者と見なされる、本人が、その場で最終判断を下す、と言うのは重要なのだ。
問題がなければただ見ているだけでよいが、判断に迷う局面になったら、明確に方向性を示す事、と、一樹は、高見沢専務から指示をされていた。
「外は寒いから、ちょっとここで待っていて。車を動かして来るわ」
そう言うと、ティナは、スカートの裾を翻して駆け出して行った。
まだ駆け出しとは言え、ＣＥＯと言う肩書きを持つとは思えぬフットワークの軽さに、一樹は、呆れとも感心ともつかぬ笑顔で、その後ろ姿を見送った。
初めてティナに会ってから、３年以上が経つ。
その間に一樹の女性観は大きく変わっていた。
ハリウッドで、初めてティナに会った時には、イブニングドレスから覗くうなじに流れる金髪を見ただけで、胸が苦しくなる程にときめく思いがしたものだが、今では、セクシーに腰を振って小走りに走る後ろ姿を見ても、あまり欲望を感じない。
別に、ティナに限った事ではなく、今では、どんな美女を見ても、以前のような欲望を感じなくなっていた。その理由は明かだった。
いづみ以来、一樹は１３タイプのエクスロイド・タイプＳＸを作り上げた。
これまでの所、その全てを幾度も実験している。
いづみ・２号機で、完成の域に達したと思われたエクスロイド・タイプＳＸだが、量産に向け、この半年で更に磨きがかけられていた。
新しいタイプＳＸたちは、少なくとも寝室でセックスの相手をする限りは、人間の女性と区別する事が出来ないほどの高性能機になった、と断言して差し支えなかった。
いや、セックスだけに限定すれば、タイプＳＸほどの女性は滅多にいない、と言った方が正確だろう。
魅力的な女性の外形データを元に、熟練のデザイナーが手を加えた芸術品のような肢体に、数千年の時が磨き上げたマダム・デュランの技巧が加わるのだ。
並みの女性に対抗出来るものではないだろう。
増加試作機以降、ホクトでは、４タイプ８機の生産試作機、５タイプ１０機の２次生産試作機を製作、その後で、増加試作機の「みれい」、「まい」、「ローラ」を加えた１２タイプ３６機の先行生産を行った。
これら１２タイプのタイプＳＸは、それぞれ異なる外形と性格を与えられていた。
それらを繰り返し実験しているうち、一樹は、自分がいっぱしのプレイボーイであるような気がし始めたほどだった。
同時に、童貞を失った時より遙かに大きな女性観の変化が、自分の心の中で生じているのを感じていた。
童貞を失うのは、男なら一度は経験するのが正常な状態だから、普通の男ならちょっと自信がつく程度で、それほど印象的な事ではない。
しかし、プロジェクト・ゼロのチーム・リーダーとして一樹の経験して来た事は、かなり特殊だった。
１３タイプのエクスロイド・タイプＳＸの実機試験を行ったと言えば何と言うこともないが、実際の行為としては、１３人の美女を相手に、セックスをした、と言う事と何ら変わりはなかった。
それだけではない。
普通なら「女遊び」と言われる、このような行為は、人目を忍び、しかも、莫大な資金を要するもので、いわゆる堅気の人間には縁のないものであった。
だが、一樹たち、特機２課の男性たちの場合は、まともな一部上場企業のサラリーマンが、日常業務の一部、または主業務として、白昼堂々――確かに、直接、行為を第三者に見せた訳ではないが――と行ったのである。しかも、その内容について、日常的にディスカッションを繰り返し、分析し、評価し、整理しなければならなかった。
こう言う生活を、一樹たちは１年以上も続けて来た。これでは、女性に対する感覚に影響があって当然だろう。
一樹は、既に、女性の見かけの美しさや、性的魅力にはあまり惹かれなくなっていた。少なくとも外観だけなら、自分たちの技術で作り出せる。それは確信出来ていたし、自分たちに生み出す事の出来る価値に、それほどの重みがあるとは思えなかった。
しかし、一樹が、女性そのものに嫌気がさしたり、絶望したりしている訳ではない。
むしろ、エクスロイド・タイプＳＸが魅力的になればなるほど、人間の女性の尊さが輝くように思えて来たのだ。
確かに、恵は勿論、静佳やティナでさえも、エクスロイド・タイプＳＸの美しさには及ばない。
Ｂマニュアルを分析しながら、我がものにした静佳も、タイプＳＸほどの技量がある訳ではない。それに、最初のうちはＢマニュアルに影響されて技巧に走った静佳も、暫くするうちに、一樹が望んだ場合を除き、止めてしまった。やはり、「客」と愛人は別なのだ。
恵とは、肉体関係すらなかった。
しかし、今の一樹には、その方がずっとよかった。
恵とのつきあいは、仕事とは別の思考回路を刺激される貴重なものだったし、静佳とは、プロジェクト・ゼロと言う希有な開発業務をする中で結ばれた、一種の同志的感情がある。
今の一樹にとって、女性の魅力とは、セックスではない、心と心の繋がりの中にあった。
心の通い合いのない、快楽の為のセックスであれば、それはエクスロイド・タイプＳＸに敵うものではない。その点では、一樹は、静佳とセックスした事を今や後悔してさえいた。
待ちきれなくなって、一樹は、結局、５分ほどで表に出た。
１月のニューヨークは寒い。
今日は幸いにも好天で日差しが暖かだったが、風は刺すように冷たかった。
だが、身体が冷える間もなく、ティナ自ら運転する白いキャディラックが、微かなエンジン音をさせながら近付いて来た。
目の前に車が止まると、一樹は、トランクを開けて貰って、荷物の小ぶりなスーツケースを自ら入れ、助手席に座った。
一樹がベルトを締めると、ティナはすぐアクセルを踏む。
２ｔ近い巨体がゆるやかに滑り出す。
その動力はモーターだ。既に、ガソリンエンジンで動く自動車は、好事家の所有する贅沢品になっていた。
ティナの運転するキャディラックは、ハイブリッド方式で、発電用の小型・高効率のガソリンエンジンを積んでいるが、それ自体が既に贅沢品であり、高級車の証のようなものだった。
幹線道路に出ると、自動的に給電レールに電極パッドを降ろし、電力供給を受けて走る。同時に、給電レールからの通信制御により、車は自動運転モードに入った。
あとは、ナビゲーションシステムで指定された行き先に自動で向かう。
人間がハンドルを握るのは、幹線道路から外れた目的地周辺のみだ。
ティナがハンドルから手を離し、リラックスする姿勢を見せた所で、一樹は尋ねた。
「ところで、『ゼロ・クォーター』の準備状況はどう？」
「任せておいて。準備万端よ……と言いたい所だけど、やはり、初めての事ばかりで、苦労しているわ。
みんな、ここはカズキが来たら相談しよう、と、待ち構えているわ。頼りにしているわよ」
ティナは、一樹の方を向き、笑顔でウィンクをした。
「やれやれだな」
一樹は溜息をついた。
「叔父様も、カズキに話したい事がいっぱいあるようで、会えるのを楽しみにしているわ」
「ふうん……何だろう？」
「叔父様は、カズキの事を気に入ったようね。『おもしろい男だ』と、誉めていたわ」
「それは光栄だな」
仕事に追いまくられるのと、話をしたいと言われるのでは大違いなので、一樹はほっとした。それに、ダグラス・トランプのような人物に気に入られるのはありがたい話に違いない。
「ねぇ、聞いて」と、ティナは話を切り替えた。「昨日の午後、コールガール組織のセックス・インストラクター相手に面白い実験をやったのよ。
ダンと言って、まだ若いけど、ちょっと性格に問題のある人で、『ゼロ・クォーター』の詳細を知らせていなかったのも好都合だったしね」
「性格に問題って？」
「彼は、女の子を”道具”としてしか見ないのね。私の所に来るまでは、ヒモみたいな事をやっていたみたい。テクニックは抜群だそうだし、客の中には似たような人も少なくないからインストラクターとしては役に立つのだけど。
それで、一昨日、動作確認の終わった日本人モデルのミレイを使って、叔父様が、事情を知らない男に黙って抱かせてみよう、と言い出したのよ。
トランプの人はみんないたずら好きだから、面白がってみんな乗ってしまってね。それで、選ばれたのがダンだった訳。
コールガール志望の新人がいるから、テストするようにと言われて、それ以上の説明抜きでミレイのいる部屋に送り込んだのよ。
ダンは、あんな性格だから女の子の身辺に興味をあまり持たないし、念の為、ミレイは日本語モードで起動させたわ」
「彼は日本語が判るの？」
「挨拶しか出来ないわ。それで、どうなったか判る？」
と、ティナは試すように一樹を見た。
「人間だと思っただろうな」
「自信たっぷりね」ティナは肩をすくめた。「その通り。でも、それだけじゃなく、大騒ぎになってしまって、今日は大変だったわ」
「え。どうかしたの？」
「今度は判らないでしょう？」
「さすがに」
一樹は苦笑した。
「ダンがね、ミレイに惚れてしまったのよ。今まで、女の子を道具としてしか見ていなかった男がね。皮肉な事に、『道具』に惚れてしまったの」
「……」
「ダンは、すっかり熱くなってしまっていて、今朝、押し掛けて来るなり、どうしてもミレイに会わせてくれ、と言って聞かないのよ。呆れた事に、彼、通訳まで連れて来ていたわ。
『彼女はこんな所にいるべきじゃない。自分が日本に連れて帰る』ってね。
セックス・インストラクターがそんな風では普通困るし、開業前の『ゼロ・クォーター』で騒動起こされても困るから、事態を収拾するのに、叔父様まで出て来ての大騒ぎになってしまったの」
「みれいが人間じゃない事は、教えてやったのでしょう？」
「勿論。口止めをした上で、事情を説明したのだけど、彼、暫くは口も利けない程だったわ」
「そこまで……」
一樹は、唖然として呟いた。
「……コールガールの個性は、男が作る、と以前、話ししたでしょう？
この場合、ダンが物語を作っちゃったのね。異国で、言葉も判らず、身体を売って生計を立てようとするミレイの物語を、ダンは、自分で勝手に作ってしまったんだわ。
女は利用するものだ、が口癖のダンが、貯金を下ろして、ミレイの日本行き航空券を買おうとしていたのよ。
ダンは、それまでの言動が問題だったから、多少の事は『いい薬だ』と思っていたのだけど、そこまで真剣になっているので、さすがに、可哀想になったわ」
「物語か……」一樹は、思わぬ事に感心したように呟いた。「男ってのは・・・どうしようもない、いや、面白いものだなぁ」
「ほんとにね」ティナも笑った。「あたしも、ミレイと暫く話をしてみたけど、日本で見た試作機とは大違いね。あれでは、人間と勘違いするのも無理ないわ」
「話題が限られていれば、半日喋っていても気がつかないんじゃないかな。量産モデルには、外形モデルから取得したプロフィールも入力してあって、趣味や生い立ちまでそれらしく喋るようになっているから。
でも、それでも限界はある。
幾らもの知らずでも、人間なら当然知っている筈の知識と言うのは、恐ろしく広範囲に渡っているから、今の技術ではその全てをカバーする事は無理だと思う。
でも、エクスロイド・タイプＳＸの場合、娼婦と寝室で高尚な議論をする訳もないし、シチュエイションも限られているので、何とか実用化出来ているんだ」
「叔父様の目の付け所も悪くはなかったと言う訳ね」
「そうだね。エクスロイドへの人工知能化は、長い事研究を続けていたのに成果が上がっていなくて諦めかけていただけに、高見沢専務は大喜びさ。大熊社長も満足そうにしている」
「叔父様もご機嫌だわ。絶対に成功するって言ってるし」
「ティナ、君はどう思う？」
「あたしも儲かると思うわ。だって、綺麗な女の子と寝る為なら、男の人はびっくりするくらいのお金を払うでしょう。
でも、コールガールは機械じゃないから、１日にそう大勢のお客は取れないし、無理をすればすぐ顔や身体に出るし……タチの悪い所だと女の子にドラッグを与えるけど、それこそ短期間で壊してしまうから、あたしは絶対に許さないわ。
でも、エクスロイドなら休み無く働いても平気でしょう。勿論、充電したり、ローションを補充したり、メンテナンスに時間を取られるけど、休憩もいらないし、文句も言わない。
部屋や衣装を整えたり、化粧をするのに多少人手がかかるけど、大した重労働じゃないし、ひとりで何体ものエクスロイドの面倒を見られるから、人件費も僅かなものね。
うちでは、コールガールたちが仕事をあぶれるようなら再就職先として斡旋しようと思っているのよ。ノウハウも活かせそうだし、客も引っ張ってこれるんじゃないか、と思っているの。
あんな綺麗な娘たちばかりが揃っていて、サービスは、コールガールのセックス・インストラクターをめろめろにしてしまう程で、病気や後腐れの心配もない、と来れば、お客が行列を作るのは間違いないわ。そうなれば、タイプＳＸも量産しなくてはならなくなって、ホクトも儲かるわ」
ティナは楽天的だった。
「そう上手く行くといいんだが」
「行くわよ、きっと。いや、そうしてみせる、と答えた方がいいかしら？」
「法律上の問題はないらしいけれど、アメリカも草の根は意外に保守的だそうだから、宗教的な問題などは心配ないのかな」
キリスト教的倫理観において、人の姿に似せたものを作る事は、「神の真似事」……つまり、悪魔の仕業とされかねないのだ。
アマノ技研が、２１世紀当初にＡＳＯＢＯの開発を開始する際には、バチカンにお伺いを立てている。
「宗教右派、特に過激派に目をつけられると確かに厄介ね。
それで、先手を打っておいたわ。そうしたうるさ方の元へこちらから出向いて『これは、女性を売春と言う賤業から開放する為のものです』って、しれっと言って来てやったの」
それを言うのが、コールガール組織のマダムなのだから、よくも言ったものである。
「よく、そんな事を……」
「あたしは女優よ」ティナは艶然と笑った。「ＡＳＯＢＯの先例もある事だし、人の役に立つ……特に、女性の救済、と言う点を強調したら、今の所、反論らしい反論は受けてないわ。
もし、反論があったら『じゃあ、この機械の代わりに人間の女の子に売春させろ、と言うのね』と切り返してやるつもりだったのに。
叔父様に、穏便に話を進めるように、と言われたのでこうしたのだけど……あたしは、多少は騒いでくれた方が、宣伝になったんじゃないか、と思っているのだけど」
と、ティナはぺろっ、と舌を出した。
「宣伝……か」ふと、思いついて一樹は尋ねた。「そう言えば、『ゼロ・クォーター』の宣伝はどう言う方法でやるの？」
「知らないの？」
ティナは、意外そうに言った。
「うん」
一樹が素直に頷いたので、ティナもそれ以上突っ込まず、あっさり言った。
「とりあえず、宣伝なしで行くわ」
「何故？」
一樹は、ちょっと意外に思って尋ねた。何か、意表をつく宣伝をするのではないか、と期待していたのである。
「だって、いくらロボットを使う事で法律上の問題をクリアしたとは言っても、『ゼロ・クォーター』は売春宿なのよ。おおっぴらに宣伝する訳にはいかないわ。
こう言う仕事はね、人目を忍んでやって、その代わりにしっかり稼ぐべきものなの」
「ふうむ……まぁ、言われてみればそうか」
少しばかりがっかりしながらも、一樹は納得して頷いた。
「それに、こう言う事は、隠せば現れるものなんだって。宣伝なんかに費用をかけなくても、１ヶ月でニューヨーク中に知れ渡って、半年後には世界中の人が知るようになる、って叔父様は自信たっぷりに言っているわ。
宣伝しないのが宣伝なんだって」
「なるほど」
これが、老練な事業家の発想なのか、と感心しながら頷いていると、クイーンズボロー橋が見えて来た。
「先にホテルに行くんだね」
ニューヨークの地理にはそう詳しくない一樹にも、このままマンハッタンに入れば、ヒルトンは目の前だと言う事くらいは判った。
「そうよ。チェックインして、荷物を部屋に置いたら、さっそく『ゼロ・クォーター』に行きましょう」
「えっと、３番街だっけ」
「ええ、叔父様が経営権を持っているホテルなんだけど、収益が落ち込んでいる上に、古くなって改修が必要になっているので、改修に合わせ、ワンフロアを『ゼロ・クォーター』にしているのよ」
「ふうん」
「エクスロイドのハードウェアに関しては、そちらにお任せだけど、ビジネスのやり方は、トランプ・コーポレーションにお任せを。
叔父様が、長年の経験を活かしていろいろと面白い事を考えているわよ。あたしのアイデアも採用されているのよ」
「へえ、どんなこと？」
「それは、行って見てのお楽しみ、と言う所ね」
ティナは、華やかに笑いながら、一樹を見てウィンクをした。
マンハッタンの高層ビル群が、目前に迫って来た。