これは、「ネバーランド」や「スパイダーウィックの謎」のフレディ・ハイモアが主演した、音楽が結ぶ家族についての一種のファンタジー映画。

　ＮＹの孤児院で暮らす１１歳の少年エヴァン。生まれてすぐに預けられ、両親の顔も名前も知らないエヴァンだが、彼は、身の回りのすべての音が音楽に聞こえてくるという”絶対音感”の持ち主。
　エヴァンは、自分を招く音楽のルーツを求めて施設を抜け出しニューヨークの街中にやってきた・・・

　遠く離れていても、運命によって結びつけられ、引き合わされる不思議なつながりを、音楽を使って表現していくアイデアは面白い。
　物語の展開は、あまりに出来過ぎで現実味がないのだけど、音楽がそこに重なると、ガラリと印象が変わるのです。
　降り注ぐ様々な音色に包まれる時、どんな奇跡も信じてしまう。映画音楽が持つ、そんな魔法の力を感じられる映画です。

　ただ、この映画、話はおとぎ話ですが、そこに現実世界の残酷さが織り込まれていることで、この映画は単なる絵空事ではない生々しい「痛み」を感じさせるものになっています。
　エヴァンを取り巻く人たちは優しい人ばかりではありません。エヴァンの天才を理解せず、異端者として排除しようとする者、その才能を利用する事に腐心する金の亡者・・・
　一見、おとぎ話にしか見えない、その物語の、その背後には悲しく辛い人間の営みが隠されているのです。だからこそ、このハッピーエンドに、拍手喝采し、涙する事が出来るのでしょう。

　また、エヴァンが耳にする音が、音楽に変貌していく場面も面白いです。
　映画の冒頭で麦畑を通り抜けていく風の音が音楽になるシーンに引き込まれるし、圧巻はニューヨークの雑踏に響き渡るありとあらゆる音が、エヴァンの耳に音楽として聞こえてくる場面です。街中の喧噪、それらの音と音が重なり合って壮大なハーモニーへと高まっていく。天才音楽家の頭の中をのぞき見るような興奮。”絶対音感”を観客に疑似体験させようとする面白い試みです。

PS
　フレディ・ハイモアの”天才”的な演技も素晴らしいけど、吹き替えなしで、演奏と歌を披露しているジョナサン・リース・マイヤーズも素晴らしい。このまま歌手転向出来るのでは!?

　（６月２２日　川崎　チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督

カーステン・シェリダン

　■出演

　エヴァン　・・・　フレディ・ハイモア

（その他のキャスト）
　ケリー・ラッセル　　ジョナサン・リース=マイヤーズ　　テレンス・ハワード　　ロビン・ウィリアムス
　ウィリアム・サドラー　　レオン・トマス３世　　ミケルティ・ウィリアムソン　　アレックス・オローリン
　ジャマイア・シモーヌ・ナッシュ　　ロナルド・ガットマン　　ボニー・マッキー

　■コピー

きっと会える。この音の先に、愛が聞こえるから。

　■Ｌｉｎｋ

http://kiseki-symphony.com/

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