ミスト
ＴＨＥ ＭＩＳＴ
これは一応、ホラー映画に分類される映画ですが、原作、スティーブン・キング、監督が、「ショーシャンクの空に」と「グリーンマイル」のフランク・ダラボン。
ただのホラーを撮る筈もなく、前評判も玄人筋にウケがいい。
ホラー映画の苦手なはらではありますが、これは、と思って観に行く事に。
物語の舞台となるのは静かな湖のある田舎町。
画家のデヴィッドの家を、ある夜、激しい嵐が襲う。翌朝、家の修理の為に家に妻を残し、彼は息子のビリーと共に近くの町のスーパーマーケットへと買出しに向かう。
その時、警報のサイレンが鳴り響くと、辺りは深い霧に包まれてしまう。
霧の中から、血塗れの男が店内に駆け込んで来て叫んだ。
「霧の中に何かいる！」と・・・
怪物や殺人者、或いは超常現象の生み出す恐怖で観る者を震え上がらせようとする多くのホラー映画。
そこから、この映画は、更に一歩踏み込みます。
この映画を並みのホラーと比較してしまえば、つまらないでしょう。クリーチャーの造形は、水準程度。ホラーに付き物のショック演出も控えめで、思わず悲鳴を上げてしまうような場面は皆無と言っていいのですから。
でも、この映画は、未知の恐怖に直面した人間の心理に迫り、その中に恐怖を描き出すのです。
信仰、勇気、理性、そして、愛・・・人間の美徳とされるものが、極限状況の中で、恐怖と化す。
さすがは、フランク・ダラボン。容赦ありません。
曖昧だった原作のラストを改変して救いようのないエンディングを与え、ハリウッドのタブーと言える”子供殺し”（あ、でもこの人結構やっちゃうんですが）を描き、真の恐怖とは、未知なるものに触れた際の人間の弱さが生み出す闇である、とスクリーンに描き出します。
「ぼくを怪物に殺させないで」と哀願した息子を殺したものが何であったか。
そして、その行為を感情移入の結果、正当なものとして観客が受け入れてしまうであろう事・・・これは見事と言うかエゲツないと言うか・・・人により受け取り方は様々だろうとは思いますが、己の心の闇をも見せつけられる思いのこの映画・・・これは、すごい。
（５月２３日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
フランク・ダラボン
■出演
デヴィッド・ドレイトン ・・・ トーマス・ジェイン
ビリー・ドレイトン ・・・ ネイサン・ギャンブル
カーモディ夫人 ・・・ マーシア・ゲイ・ハーデン
（その他のキャスト）
ローリー・ホールデン アンドレ・ブラウアー トビー・ジョーンズ ウィリアム・サドラー
ジェフリー・デマン フランシス・スターンハーゲン アレクサ・ダヴァロス
クリス・オーウェン サム・ウィトワー ロバート・C・トレヴァイラー デヴィッド・ジェンセン
ケリー・コリンズ・リンツ
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この子と約束した 必ず守ると――
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