光州５・１８
これは、韓国で起きた最悪の争乱事件、「光州の悲劇」を描く映画です。
１９８０年、韓国南部の街、光州でタクシー運転手として働く青年ミヌは、亡くなった両親に代わって、弟ジヌの面倒を見ていた。
ある日、彼が想いを寄せる看護師シネとジヌとの３人で映画を観に行くことになるが、街では民主化を求める学生デモ隊と軍隊との衝突が始まっていた・・・
光州事件とは、１９８０年５月、学生デモを鎮圧する軍隊に反発した市民が、学生達に同調、武器を奪取して軍隊を街から追い返してしまったと言う韓国近代史で最悪レベルの争乱事件です。数日後、武力による軍の鎮圧により争乱は鎮圧されましたが、一般市民に軍隊が銃を発砲したと言う最悪の事態の為、事件の全容は未だ明かにはされていません。
公表されている犠牲者は、市民だけで１８９人ですが、それは過小に過ぎ、２０００人を越える犠牲者が出た、と言う説もあるようです。
こうした近代史の最暗部を描いた作品にも関わらず、導入部はまるでロマコメのノリ。悲惨な事件との対比を強調し、映画をあくまで人間ドラマとして描く、韓国映画の王道パターンです。
どんなにテーマが重く、結末が悲痛でも、映画はあくまでエンターテインメント、笑わせ、楽しませ、そして泣かせなければならない・・・と言う姿勢は、理解は出来ますが、この映画にはちょっと、と言う気もします。
（「シルミド」とか、そうでない映画もある訳で・・・）
しかし、３０年前に、こうした事件があったとは・・・そして、日本でもその更に１０年前には、同様に激しい学生運動が繰り広げられていたのです。
こうした歴史の上に、現在の自由な社会がある。
だからこそ、こうした映画が作られる訳だし、それを語り継いで行く必要もある。
ラストの写真、死んで行った人たちが未来を信じて明るく笑っているのに、生き延びたヒロインの表情だけが曇っているのは、その手が血塗れだと言うだけではないのでしょう。
それが、これからを背負って生きて行く我々の責任なのかもしれません。
（５月１１日 １０９シネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
キム・ジフン
■出演
カン・ミヌ ・・・ キム・サンギョン
パク・シネ ・・・ イ・ヨウォン
カン・ジヌ ・・・ イ・ジュンギ
（その他のキャスト）
アン・ソンギ ソン・ジェホ ナ・ムニ パク・チョルミン
パク・ウォンサン チョン・インギ ソン・ビョンホ イ・オル
■コピー
今日、弟が殺された。オレの目の前で──
■Ｌｉｎｋ
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