フライ・ダディ

大切なものをまもりたいんだろ?


 これは、金城一紀の小説、「フライ,ダディ,フライ」を韓国で映画化したもの。
 この小説、日本でも2005年に同題の映画が製作されているけれど、この映画は、そのリメイクと言う訳ではなく、原作の映画化、と見てよさそうです。
 しかし、この邦題は・・・「フライ,ダディ,フライ」でもいいんじゃないでしょうか。
 それが原作のタイトルなんだし、韓国での英語タイトルもそうなのですから。

 それはさておき。

 物語の主人公のチャン・ガピルは、平凡なサラリーマン。
 大学卒業後、何とか上場企業に滑り込み、長年の勤務の末に漸く部長への昇格の話も聞こえて来た。マイホームも手に入れ、美人の妻と、高校生に入ったばかりのかわいい娘と共に、幸せな毎日を送る、普通のお父さんだった。

 ところが、冬休み直前のある日、娘が見知らぬ高校生に暴行され入院したことで、家庭は崩壊してしまう。
 娘にケガを負わせた高校生は高校ボクシングチャンピオン。しかも、政府高官の父親に依頼された生徒の学校側は、事件を金と権力で揉み消そうとし、ガピルを逆に脅し上げた。
 ガピルは、その理不尽な仕打ちに対抗出来ず、己の無力さを紛らわすように、妻と娘を怒鳴りつけてしまったのだ。

 数日後、思い詰めた挙げ句に、娘に暴行した高校生の通う学校に乗り込んだガピルだが、やたらとケンカの強い生徒に、呆気なくのされてしまう・・・

 こうして物語の流れを追っていくと、原作の舞台を韓国に移し替えただけ、と言うのが判ると思います。
 映画としては、同じ原作を持つだけに、日本版の映画と似たような出来映えになっているのですが・・・日本版よりよかった、と思えるのが、主人公のキャラクター。
 日本版で、主人公のサラリーマンを演じたのは堤真一で、原作のイメージからすると、ちょっと格好よ過ぎる感があったのですが、この映画のイ・ムンシクは、いかにも普通のおじさん然としており、映画冒頭では、ほんとにお腹もたるんだ、中年男そのままの体格。
 それが訓練によって、見事腹筋の2本線がお腹に浮き出るようになるまで変わっていくのですから、これは見事なもの。
 (実際、クランクイン前に増量して弛ませたお腹を、映画撮影中に15kg減量して、平らにしてみせたのです)
 ラストシーンは、原作でも描かなかった、「その後」まで描き、サービス満点です。

 逆にひっかかったのは、汗と涙が少ない(大泣きしているシーンなのに涙が出てない!)演出と、ラストの対決シーンがちょっとクドい事あたりでしょうか。
 ま・・・この辺り、監督のセンス、それに国民性と言う部分もあるかもしれませんが。

 まぁ、リメイクみたいなものだけに新鮮味はなかったけど、やはりこれはいい話だと再確認。
 この映画もよかったです。

 (5月1日 シネマート新宿にて)


(作品データ)

 ■監督

チェ・ジョンテ

 ■出演

 チャン・ガピル ・・・ イ・ムンシク
 コ・スンソク   ・・・ イ・ジュンギ

(その他のキャスト)
 キム・ソウン  イ・ジュ  パプピニョンジュ
 キム・ジフン

 ■コピー

大切なものを守りたいんだろ?

 ■Link

http://www.cinemart.co.jp/flydaddy/#


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