夢駆ける馬　ドリーマー

夢に向かって走れば　　
　　　　　奇跡はおきる

　休日出勤の土曜日、ちょっと早めに会社を上がり、ＴＯＨＯシネマズ海老名で「ダヴィンチ・コード」を観ようと思ったのですが・・・さすがに、この話題作を週末に観ようと言うのは、さすがに読みが甘く、チケット完売。
　そこで、３０分ばかり待って「夢駆ける馬ドリーマー」を観る事にしました。

　これは、１頭の競走馬が起こした奇跡の物語。

　アメリカで有数の競走馬の産地、ケンタッキー州レキシントン。
　元々、優れた競走馬の生産牧場主だったが、今や牧場に馬もなく、雇われ調教師となっているベン。
　このベンが、転倒して前足を骨折した競走馬、「ソーニャドール」を馬主に反対して引き取った所から物語は始まる。
　怒った馬主は、ベンをクビにしてしまったけれど、ベンには計算があった。
　血筋のいいソーニャド−ルだけに、走れなくても優秀な牡馬の種をつけさせて、子馬を生ませれば高く売れる、と踏んだのだが・・・ソーニャドールは不妊症だった。
　仕事を失い、脚を折った競走馬を抱え、途方に暮れるビルだが・・・

　この映画の原題は「Dreamer: Inspired by a True Story」で、この物語が実話をベースにしていることを意味しています。
　モデルになったのは1990年代半ばまで活躍したマライアズストームという競走馬。
　骨折して一時は安楽死を検討されたこの馬は、その後、レースに復帰して幾つかの大きなレースに勝利したと言います。
　サラブレッドは一度骨折すると安楽死させるのが通常で、治療したとしても大抵は歩く事すら出来ず、却って苦しんで死ぬ事になるのです。
　それが再び競馬場に戻って、勝利する、と言うのはそれ自体が奇跡の物語なのです。

　主演のベンには、カート・ラッセル。その父親を演じたクリス・クリストファーソンと共に、不器用で土臭い感じがなんとも雰囲気。
　事実上の主役となる娘のケールを、ダコタ・ファニングが演じていますが、その演技、そして存在感は、やはり大したもの。
　特に、ソーニャドールの馬主となってから、その責任感を小さな身体に背負って、大の大人と対等に渡り合う姿は迫力さえ感じさせます。その意思と信じる力、それは正に「奇跡を起こす」だろう、と思わせるものでした。

　この映画は人生に再挑戦しようとする人たちへの応援歌です。
　失敗して、傷ついて、もうこれで万事休すと思ったとしても、困難に立ち向かう勇気さえあれば道は開ける。
　大切なのは、信じること。
　物語の中で中心になるのは、父から受け継いだ牧場の経営に失敗したビルが、そんなビルを信じる妻や娘に支えられ、一頭の馬、そして娘に自らの人生を託す姿です。
　同様に逆境の中でも未来を諦めなかった「シービスケット」の物語に近い部分はありますが、この映画では、家族の再生により比重が置かれている感じです。
　逆に、気になったのは、その家族の再生の描写に比重を置いたせいで、ソーニャドールの治癒と復活、そして、それに合わせてカムバックを果たす、トラウマを抱えた騎手の描写が物足りないものになってしまっていることですが・・・まぁ、それも致命的な問題ではないでしょう。
　いささか甘口な感じはあるものの、前向きなテーマに、美しい風景、そして柔らかな音楽・・・何とも優しく、心和まされる映画です。

　（５月２７日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

（作品データ）

　■監督

ジョン・ゲイティンズ

　■出演

　ケール　・・・　ダコタ・ファニング
　ベン　　 ・・・　カート・ラッセル

（その他のキャスト）
　クリス・クリストファーソン　　エリザベス・シュー　　ルイス・ガスマン
　フレディ・ロドリゲス　　デヴィッド・モース　　オデッド・フェール

　■コピー

走れ！ソーニャドール　 少女ケールの夢を乗せて

　■Ｌｉｎｋ

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