サイドウェイ

　土曜日は、休日出勤の後で、ＴＯＨＯシネマズ海老名で「サイドウェイ」を観て来ました。

　これは、「アバウト・シュミット」のアレクサンダー・ペイン監督による、ワインを題材にした、ちょいと渋めのコメディ。

　作家志望の国語教師マイルスは、冴えない中年男。妻と離婚して２年、悲観性で、女性にも自分の才能にも自信が持てないが、ことワインだけは譲らない。
　そんなマイルスが、結婚を１週間後に控えた親友の売れない俳優のジャックと、ワイナリーを回る旅に出る。
　もっともそれは表向き、独身生活の最後にと、女漁りに目をギラつかせるジャックと、何かと落ち込んではふさぎ込むマイルスのでこぼこ中年コンビの旅の行方は・・・

　趣味の世界は、どんなものでも蘊蓄を語られる事の多いもの。
　こうした蘊蓄を、興味のない人にも得々と語ってしまうのは・・・まぁ、よくありがちな事だと思います。（反省）
　この映画は、そうしたワインについての蘊蓄を、人生と重ね合わせ、一級のコメディとしてきました。

　物語の主人公は、二人の中年男。
　旅に出たのが若者であるならば、人生の教訓を得て、成長して帰って来る所ですけど、中年男の旅は、己と向かい合い、己の限界を知る為のものになってしまいます。
　自分にとって大切なものは何か、至らないものは何か。
　上り調子の無限の可能性は既になく、ピークを過ぎて後は下り坂の人生だけど、そんな「未来」も捨てたもんではない、とワインの熟成を重ねて語る映画の口調は、ほろ苦いけどどこか優しい感じがします。

　主演はポール・ジアマッティ、その他のキャストにも人気俳優の名前はなく、地味な作品ではありますが、これでも本年度アカデミー賞の作品賞候補で、脚色賞を受賞。
　やはり、平凡な中年男のドラマだけに、他人事に思えない人が多いのかなぁ。

　ワインの味は、瓶を前に蘊蓄を語ってみても何も判らず、栓を開けなければ判りません。
　人生も同様、ふさぎ込んでいても何も始まらず、心の栓を開けば、きっと理解が得られる、と言う希望を含ませたエンディングもいい。
　（それが難しい所ではあるのですが）

　この映画風にちょっと気取って言うと、口当たりは悪くないが、甘さだけではなく、酸味も渋みもあるフルボディの味わい、と言う所でしょうか。

　（３月２６日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

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