「セクレタリー」

　爽やかな「藍色夏恋」の後、コレを持ってくるのもどうかと思いましたが・・・(^^;

　これは、自傷癖のある秘書の女性が、オフィスで”調教”されてしまう、と言うオハナシ。

　映画冒頭、ＳＭプレイ用の拘束具で両腕を拘束された女性が、オフィスで秘書業務をしているシーンで、ぎょっとさせますが、この映画、ちょっとトボけたような独特のコメディタッチで、秘書・リーと、彼女の雇い主、Ｍｒ．グレイの関係を描いて行きます。

　この映画の主人公、リー・ホロウェイは、自傷癖が高じて自殺未遂の騒ぎを起こし、精神病院に入院する羽目になってしまった。退院した彼女は自立自活の道を探るため、タイピストの資格を取得、秘書として弁護士事務所に就職する。
　事務所のボスであるＭｒ．グレイは、嫌がらせのように、次々つまらない仕事を秘書に押し付けるが、それにリーは従い続け、いつしかふたりの間には、事務所のボスと秘書という関係を越えた”絆”が結ばれて・・・

　精神的なストレスを自傷行為によって埋め合わせていたリーは、何から何まで自分の思い通りでないと気が済まないＭｒ．グレイに命令され、それに応えられなかった時には”お仕置き”されると言う、”被支配”の関係に置かれる事で精神の安定を得る。
　まぁ、自殺未遂まで起こした重度の自傷癖を持っていたリーにしてみれば、自傷行為がなくなっただけでも”正常”に近いとは言えるのだけど、元々、そうした素養があったにせよ、”お仕置き”が、オフィスでのＳＭプレイ紛いの行為にまでエスカレートしてしまったＭｒ．グレイにとっては、どうしても、自分の行為を”異常”と考えてしまい、「こんなことが続けられる訳がない」と、２人の関係を解消してしまおう、としたりする。
　まぁ、ＳＭプレイでもある事のようだけど、被支配される側が、実は主導権を持っていた、と言う辺り、これは様々な人間関係でも考えられる、なかなか面白い視点です。

　この映画、キャストも一癖ある人間で固めています。
　秘書のリーには、マギー・ギレンホール。
　どことなく野暮ったく、いかにも「イジメられっ子」な感じは、正にこの役にピッタリです。
　（しかし、弟のジェイク・ギレンホールと、よく似た顔だなぁ(^^;）
　Ｍｒ．グレイには、”隠れ変態”のジェイムズ・スペイダー。
　また、リーの恋人役として、ジェレミー・デイビスがキャスティングされていますが、これまたお得意の精神衰弱演技を見せてくれます。

　ラストの展開は、これまた「そう来るか！」ってな感じ。
　どこまでが”正常”で、どこからが”倒錯”なのか・・・支配と被支配の逆転と共に、こちらの方も新たな線引きが必要なような感じです。

　（８月１７日　シネマスクエアとうきゅうにて）

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