「藍色夏恋」

　これは、少女の初恋を描いた台湾／フランス合作映画です。

　主人公のモン・クーロウは１７歳の高校生。
　親友のリン・ユエチャンから、水泳部のチャン・シーハオへの想いを相談されたモン・クーロウは、ユエチャンに代わり、彼にその事を告げる。
　しかし、ユエチャンは恥ずかしがってチャン・シーハオの前に姿を見せず、シーハオは、てっきりモン・クーロウが自分に告白したものと誤解をしてしまう。
　こうして、モン・クーロウとユエチャン、シーハオの、３人の高校最後の夏はすれ違う想いから始まった・・・
　
　この映画、物語としては、特に目新しくも、ドラマティックでも何でもない映画なんだけど、観る人の多くに、懐かしさと共に、なんだかくすぐったくなるような感じを与えるのではないでしょうか。
　初めて恋した時の、ひたむきな、やり場のない思い。
　思いと行動が一致しないもどかしさ・・・映画の中で、淡々と描かれる、その恋模様に、自分の思い出を重ねてしまう事も多いように思うのです。

　主人公のモン・クーロウを演じたグイ・ルンメイは、いかにも気の強そうな、力のある視線が印象的ですが、美少女と言うより、少年っぽさのある中性的な感じ。
　それが、自分が「女」と言う事をまだ理解し切れていない、未熟さを醸し出していたように思います。
　彼女の心は、その未熟さ故に、恋心を抱いた少年と、友人の少女の狭間を揺れ動くのです。

　そんな彼女らの過ごす高校生活最後の夏を映画は描きます。
　校内の喧噪。体育館の落書き。放課後の誰もいないプール。
　そんな時間を大事にするかのように、彼女は自分の思いを押さえ「今」を引き延ばそうとするのですが・・・勿論、それがはかない抵抗だと言う事は、彼女にだって判っているのです。
　自分を知り、少しだけ未来が見えるようになった彼女は、それだけ「大人」になった、と言う事。
　この夏が終われば高校生活も終わり、否応なしに大人への階段を上る事になる。
　そして、いつの日か、「あの夏」がかけがえのないものであった事を思い出すのでしょう。

　この映画は、そんなかけがえのない青春の一コマを切り取ったかのような映画。
　キラキラ輝きながらも爽やかな印象の映画です。

　（８月１７日　日比谷・シャンテシネにて）

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