ぼのぼの　クモモの木のこと

思い出はみんな美しい。

　風邪の治らない週末の日曜、気分転換にちょいと出掛け、映画を観てきました。
　こう言う時だから、近間で、短いヤツを、と言う事で選んだのが「ぼのぼの　〜クモモの木のこと」です。

　これは、いがらしみきおの人気４コママンガ、「ぼのぼの」を、アニメ化、それも、オール３ＤＣＧ化した異色作。
　スクリーンに登場するぼのぼのたちは、原作のマンガそのままのデフォルメされた姿そのままに、ふわふわの体毛を持つ、まるでぬいぐるみのようなキャラクターに造形されています。
　リアルなＣＧとも、セルアニメとも違う、その映像は確かに印象的。
　低予算で、技術的にもまだまだなのだろうけど、それを逆手に取った出来映え（まぁ、幾度も通用する手段ではないだろうけど）に思います。
　但し、カメラがパンした時の、ギクシャクとした動きやノイズ、それに、目立つシャギーなどは、どうにかして欲しい所。

　主人公のぼのぼのが暮らす森の中の丘の上に、「クモモの木」と言う不思議な木がありました。
　森の動物たちは、悲しい事や辛い事があると、その木の下にやって来るのです。
　クモモの木には、そんな思いを忘れさせてくれる、不思議な力がありました。
　ある日、ぼのぼのは、クモモの木の下で誰かを待ち続ける、ポポと仲良くなるのだけど・・・

　物語の方は、これはどうしようもなく甘口。
　ただ、そこにきちんと背骨が通っていることが、この映画を支えています。
　その背骨となる、この映画のテーマは「思い出」。
　デヴィッド・リンチは、映画「ストレイト・ストーリー」で、主人公の老人に、長生きをして辛いのは過去を覚えている事だ、と語らせました。
　それもまた人生のひとつの真理であろうけれど、この映画は、全く逆の事を語りかけます。
　「何でみんな忘れてしまおうとするんだろう。俺は、あの感動を思い出したいんだ」
　どんな人にだって、楽しかった時、美しいものに触れた感動がある。
　みんなそのことを忘れ、つまらない人生を生きていると思っているけれど、実は、ただ、そんな「大切なもの」を忘れてしまっているだけなんじゃないだろうか、と。
　こうした部分、正に「ぼのぼの」の本領発揮と思います。

　ゴンチチの音楽は、雰囲気には合っていたけれど、ＢＧＭとして、ずっと入りっぱなしになっていたのはちょっとやりすぎ。
　もう少し、メリハリを付けて使えば、盛り上がりも出ただろうと思います。
　あと、クライマックスに使った「Danny Boy」ですが、これも選曲を考えて欲しかった所。（はらは、これかけられると「メンフィス・ベル」を思い出すのです(^^;）悪い曲じゃないんだけど、「ぼのぼの」のイメージじゃないような気がします。

　（１２月２２日　伊勢佐木町・横濱シネマにて）

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