スプリット
これは、「シックス・センス」や「アンブレイカブル」のＭ・ナイト・シャマラン監督の新作。
クラスの人気者であるクレアの誕生日パーティに招待された孤独な女子高生のケイシーは、パーティの後、マルシアと共にクレアの父親の車で家まで送ってもらうことになる。
ところが、突然運転席に乗り込んできた見知らぬ男に３人は拉致され、気がつくと窓もない地下室のような部屋に監禁されていた。
男は多重人格者で、拉致を実行した強面の人格の他、女性や少年など様々な人格を見せる。
ケイシーは、パニックになるクレアとマルシアを励まし、男が取り付きやすそうな人格になった際を見計らって懐柔、脱出を試みるのだが……
シャマラン監督の持ち味は、終盤の価値観逆転の一発芸が持ち味で、そこまで観客の興味を引っ張る事が出来るのかどうかが作品の評価の分かれ目のように思います。
その点、本作はなかなかよく出来ています。
過去にトラウマを持つ、孤独な不思議系女子高生のケイシーを主人公とし、タイプの違う２人と合わせた美少女３人、彼女らの脱出への試みを描いて、サスペンスを作り出し、更に、彼女らの服を徐々に脱がせていく事で、限られた閉鎖空間のマンネリ感を抑える、と言う工夫は効果的です。
そして、何よりも２３＋１人格と言う多重人格者（ただし、作品内で描写されたのは１０人足らず、主要人格は５つでしかありませんが）を演じたジェームズ・マカヴォイの演技は最大の見所。役者なのだから当然とは言え、人格が変わると顔つきまで変わって別人に見えるのだから大したものです。
また、ケイティ役はシャマランの新ミューズ、アニャ・テイラー＝ジョイでミステリアスな美貌はいかにもシャマラン好み。彼女には今後も注目でしょう。
その一方で不満だったのは、本来、シャマラン監督が得意とする筈の終盤の急展開。
最後に現れる＋１の人格の“怪物”がいささか残念な見栄え（人格が肉体を変容させる、と言うならもっと派手に変身させた方がよかったのでは？）でしたし、その“怪物”と対決したケイティが“怪物”を倒せなかったのは残念でした。
勇気を以て立ち向かい“怪物”を倒して生還したケイティが、その勇気で、とうとう引けなかった引き金を引き、過去のトラウマを乗り越える、と言うのがあるべきラストだったように思うのですが……本作で生み出したヴィランをスーパーヒーローと対峙させる続編が予定されているとの事で、そんな事情により本作の完成度が引き下げられたのが残念に思えました、
ＰＳ
続編になるのは、本作のヴィランと、「アンブレイカブル」のデヴィッドが戦う、スーパーヒーローもの。
一発芸スリラーが得意なシャマラン監督が、他ジャンルに挑んでも、ろくな結果にならないのは、これまでの実績が語っていると思うのですが……
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
M・ナイト・シャマラン
■出演
ケビン ・・・ ジェイムズ・マカヴォイ
ケイシー ・・・ アニャ・テイラー=ジョイ
（その他のキャスト）
ベティ・バックリー ジェシカ・スーラ ヘイリー・ルー・リチャードソン ニール・ハフ M・ナイト・シャマラン
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恐怖は分裂<スプリット>する
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