「バーバー」
The Man Who Wasn't There

　今日は、ちょいと風が強かったのだけど、折角の晴天なので、バイクでちょろっと海を見に行った後で、恵比寿のガーデンシネマで「バーバー」を観て来ました。

　「オー・ブラザー！」のコーエン兄弟の最新作は、１９４０年代のアメリカを舞台とした犯罪ドラマ。主演はビリー・ボブ・ソートンです。

　主人公は床屋のエド・クレイン。
　妻の実家がたまたま床屋だったため、成り行きで床屋になってしまっただけの無口な男だ。
　妻のドリスはデパートで帳簿係をしているが、上司のデイヴと不倫中。エドはふたりの関係に気付いているが、特に騒ぎ立てるつもりもない。
　彼は退屈な日常にうんざりしつつも、そこに波風を立てる事を望まずに生きていた。
　そんな毎日を過ごすエドの店に、ひとりの男がやってくる。ドライクリーニングのチェーン店を開くにあたって、出資者を探しに来たのだと言う。出資金は１万ドル。
　エド、不意に目の前に現れた、退屈な毎日から抜け出す手段に奇妙に惹かれ、何とか１万ドルを用意しようと決意する。
　エドはドリスの不倫関係をネタに、デイヴを匿名で恐喝することを思いついたのだが・・・

　この映画、平凡な男がちょっとした野心（イタズラ心のような感じでもあるけれど・・・）を抱いた事で、次々に事件が起こって人が死んで行くと言うタイプの犯罪ドラマ。
　この種のドラマは、下手すると血みどろの映画になりそうなんだけど、映画は、時代を１９４０年代とし、更にモノクロフィルムに焼き付ける事で、現実感を薄めています。

　映画はエドの回想録と言う形で語られ、無口で真面目なだけで面白みに欠けるエドの性格そのままに淡々と進みます。
　この描写はある意味でハードボイルドなんだけど、これにベートーベンのピアノソナタを合わせると言う、音楽センスは意外性があってなかなかよかった。
　ドライクリーニングやデパートの隆盛など、４０年代の世相を伝える内容を映画に盛り込む辺りもなかなか巧みだったとは思うけど、ＵＦＯとロズウェル事件については、ちょいと空回りした感じだったかな。

　モノクロの映像は美しく、音楽もよく、物語も巧みだとは思うのだけど、ただ、私的にはこの、シニカルな語り口はあまり馴染めず、イマイチ乗り切れなかった感じがします。

　（６月９日　恵比寿ガーデンシネマにて）

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