闇金ウシジマくん
 The Final

 これは、真鍋昌平による人気コミック「闇金ウシジマくん」の映画版第四弾。
 トゴ(10日で5割)の暴利で金を貸す闇金融「カウカウファイナンス」を舞台にした金と欲望のドラマの最終巻となります。
 
 ある日、「カウカウファイナンス」の丑嶋馨のもとに、かつての同級生、竹本が訪ねてくる。
 他人を助けるために金を借りたいと言う竹本だが、無職・住所不定の人間に金は貸せない、と丑嶋は追い返す。
 だが、丑嶋は心にひっかかるものがあった。実は丑嶋と竹本、そして柄崎には、中学生時代にある因縁があったのだ。
 やがて、この出会いが更なる過去の因縁を呼び起こし、大きな事件となって行く……

 原作を元に2つのエピソードを絡ませて映画にする、と言う映画「ウシジマくん」の方法論は本作でも踏襲されていますが、今回は組み合わせが機能していると共に、丑嶋の過去を語る、と言う展開から、物語の中心に丑嶋が位置する事になったせいもあって、物語がぐっと引き締まって面白くなりました。
 出演キャストもなかなか豪華なのですが、今回、光っていたのは中学生時代の丑嶋を演じた狩野見恭平。
 山田孝之演じる丑嶋を彷彿とさせる無表情に、抑揚を抑えた台詞回し。幼いのだけど、そこに確かに“丑嶋”がいる、と思わせる存在感は見事なもの。
 そんな彼らが描き出す中学時代の丑嶋らの物語は、意外にも心揺さぶられる感動的なシーンもあったりする見応えのある出来となっていました。

 現代パートの物語も、貧困ビジネスに加え、近頃ではTV−CMまで流すようになった「過払い金請求」を取り上げ、借金に振り回される愚かな人間を描くだけではなく、この「過払い金請求」もまた弱者を食い物にするビジネスの母体ともなる、と切り込んで行く辺り、社会派視線もなかなかです。
 そして、中盤以降は、丑嶋ら「カウカウファイナンス」に、鰐戸三兄弟、そして犀原茜が絡む三つ巴の戦いになって行く、と……
 緊迫度を増した展開に、遠慮抜きの残酷描写、と、前作「Part3」ではいささか失望した辺りも今度は挽回した印象です。

 そして、今回の映画で最も挑戦的に思えたのが、丑嶋のカウンターパートとなる竹本の存在。
 これまでの映画「ウシジマくん」の中で、誰も揺るがす事が出来なかった丑嶋の持つ個性とドグマ。それと真っ向から対立する、「偽善者」とさえ呼ばれる異常なまでのお人好しの竹本。でも、彼は、その生き方は「人が人を見捨てたらお終いだ」と言う丑嶋を見習ったからだ、と言うのです。
 竹本はそうして丑嶋と対立し、最後には不動の丑嶋をぐらつかせる……そこに至るまでの丑嶋を長回しで捉え、最後にぐらつかせた所で打ち切って余韻を残す締めくくり。
 「その先」をどうしても考えさせられてしまう見事なラストカットで、このシリーズ最終作で一気に印象を好転させた感じです。
 

 (年 月日 にて)


(作品データ)

 ■監督

山口雅俊  

 ■出演

 丑嶋馨   ・・・ 山田孝之

 丑嶋馨(14歳) ・・・ 狩野見恭平

 竹本優希 ・・・ 永山絢斗

(その他のキャスト)
 綾野剛   高橋メアリージュン  真飛聖  間宮祥太郎  YOUNG DAIS  真野恵梨菜
 マキタスポーツ  崎本大海  やべきょうすけ  最上もが  太賀  湊莉久  天使もえ
 玉城ティナ  六角精児  岩井ジョニ男  モロ師岡  安藤政信  八嶋智人  

 ■コピー

バイバイ、ウシジマ。 

 ■Link

http://ymkn-ushijima-movie.com/index_pc.html 


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