| 闇金ウシジマくん Ｐａｒｔ３ |
これは、真鍋昌平による人気コミック「闇金ウシジマくん」の映画版第三弾。尚、来月公開の第四弾にして完結編の「ザ・ファイナル」とは独立した内容となっています。
トゴ（１０日で５割）の暴利で金を貸す闇金融「カウカウファイナンス」の社長・丑嶋を中心に金と欲望に踊らされる人間たちを描く物語です。
派遣の日雇い仕事で食いつなぐ若者・沢村真司は“誰でも稼げる”と言う怪しげな塾を主宰する天生翔のセミナーに出席、一か八かのバクチに出る覚悟を決める。
一方、女好きのサラリーマンの加茂は、妻のいる身でありながら不倫関係を続行中に加え、キャバクラ通いの日々。お気に入りのキャバ嬢・花蓮を落とす軍資金欲しさに「カウカウファイナンス」から借金をして……
原作コミックの２つのエピソード（今回は「フリーエージェントくん編」と「中年会社員くん編」）を組み合わせ、劇場版として豪華キャストで仕上げると言う劇場版「ウシジマくん」の方法論は今回も同じ。
ＡＫＢの大島優子を引っ張り出した１作目同様、今度は乃木坂４８のエース、白石麻衣を起用するなど同じパターンを踏襲しています。
ただ、そうしたやり方が読めてしまっているのに加え、回を重ねるごとに温くなる描写と、２つのエピソードを交錯させることなく並行して走らせるだけ、と言う工夫のない構成のせいもあって、１作目の持っていたインパクトも今やなくなってしまいました。
白石麻衣は下着姿は見せるものの、キスシーンまでで綺麗なイメージを保ち続けたままですし、加茂役がオリエンタルラジオの藤森慎吾、と言うのもハマり過ぎて新鮮味がないくらい。
むしろ、若きカリスマの天生を演じた浜野謙太の怪演ぶりの方が印象に残りました。
今回の映画では丑嶋を始めとする「カウカウファイナンス」の面々の活躍する場面も少なく、その暴力性もコミカライズされていて、“恐ろしさ”が希薄になってしまっていますし、「カウカウファイナンス」の置かれている地位も描かれないのが物足りない――この辺りは来月の「ザ・ファイナル」に期待でしょうか？
また、これまでの債務者の中には丑嶋を出し抜こう、として対立する構図もあったのですが、今回は丑嶋は金を貸して取り立てるだけに止まって物語との係わりが希薄で、その分、欲に己を失った債務者の愚かさばかりが目立つ構図となっているのも感情移入を削いだ要因となっています。
それから、丑嶋が“ダークヒーロー”のようになり、債務者に妙な温情をかけているのも違和感あり。
丑嶋のやり口からしたら、沢村は「カウカウファイナンス」で大見得切った責任を取って己の生命保険で紹介した債務者の借金返済を強いられる所でしょうし、加茂だって退職金までむしり取らるようにも思えました。
まぁ、この辺り、原作通りと言えばそうですし、回を重ねる度に主人公が親しみやすい存在になっていく（判り易い例としては「ゴジラ」が挙げられます）のは仕方の無い事なのかも知れません。
その意味では、来月の「ザ・ファイナル」で、このシリーズが終了となるのもいい潮時のように思いました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
山口雅俊
■出演
丑嶋馨 ・・・ 山田孝之
沢村真司 ・・・ 本郷奏多
天生翔 ・・・ 浜野謙太
加茂 ・・・ 藤森慎吾
花蓮 ・・・ 筧美和子
（その他のキャスト）
白石麻衣 綾野剛 高橋メアリージュン 山田裕貴 前野朋哉 矢野聖人
マキタスポーツ 崎本大海 やべきょうすけ 最上もが 児嶋一哉 さくらゆら
岸井ゆきの 水澤伸吾 山下容莉枝 大杉漣
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