インサイダーズ
内部者たち
これは、韓国で人気の同題のウェブコミックを、イ・ビョンホン主演で映画化したもの。
内容的に成人指定となってしまったのですが、成人指定作品史上、と言う前置きではありながら韓国歴代１位のヒットとなったヒット映画です。
次期大統領選への出馬を目論む与党議員のチャン・ピル。その後ろ盾となって政界への影響力を決定的にしようと企む財閥系のミレ自動車の会長。仲介をするのは大手新聞、祖国日報主幹のイ・ガンヒだった……政治と財閥とマスコミ、この三者が手を組めば怖いものはない。
こうした癒着の構造の陰で、ガンヒが汚れ仕事を任されていたアン・サングは、ミレ自動車の社員が検察にリークしようとしていた裏金ファイルの回収を命じられた。
ファイルを回収したサングだが“保険”として情報を漏らした事を咎められて失墜してしまう。
一方、金権政治を正そうと奮闘する検事ウ・ジャンフンは、チンピラに墜ちたアン・サングを追い、一発逆転の告白をしようと持ちかけて……
映画内容としては、財閥を中心とした腐敗した権力構造に“正義の一撃”を加える、と言う内容で、同時期に製作された「ベテラン」同様、財閥がのさばる権力構造に対する不満と鬱憤が韓国市民の間に溜まっている事を覗わせるもの。
「ベテラン」に対し、こちらは成人指定としただけに、暴力描写の残酷さ、裸女をはべらす露骨な性的接待描写なども盛り込まれています。そうして、悪党をエゲつなく悪党として描くのも韓国映画ならではですし、都合が悪くなると体調不良を理由に入院して追求逃れをする権力者の様を露骨に描くのもそれらしい。
内容的には、イ・ビョンホン主演とは言え、女性客を呼び込めるようなものではなく、これで大ヒットをしたと言うのは韓国映画界と言うのは女子供向けの映画ばかりの日本映画界とは違うのだなぁ、と思わされます。
構成としては時間軸を行き来があり、映画冒頭のアン・サングの記者会見が逆転勝利のクライマックスかと思わせて、そこから悪党サイドにひっくり返させ、絶体絶命の窮地に追い込んでからの再逆転を見せる、先の読めない展開は見事なもの。
もっとも、最後の逆転劇は、痛快ではあるもののいささか取ってつけたような印象があったのですが、未完の原作に対して劇場版でオリジナル作成したエピソードと言う事で納得。
それでも、マスコミの「言葉の力」が「誰が言ったのか」により左右されるとした見解には唸らされますし、ネタバラシのエピソードもテンポがよくって小気味よいものでした。
出演者としてはやはりイ・ビョンホンの存在感が抜群。
これまで演じて来た理性的で冷静な、と言う役柄を変え、軽薄なお調子者と言うアン・サングを、自らギャグのアイデアも出して役作りし“憎めない小悪党”と言うアン・サングを魅力的に演じているのが面白い。
一方、ウ・ジャンフン役のチョ・スンウは、立派に“正義の味方”はしているのだけど、少しは遊びがあった方がよかったのでは、と思いました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督・脚本
ウ・ミンホ
■出演
アン・サング ・・・ イ・ビョンホン
ウ・ジャンフン ・・・ チョ・スンウ
イ・ガンヒ ・・・ ペク・ユンシク
（その他のキャスト）
イ・ギョンヨン キム・ホンパ チョ・ジェユン ペ・ソンウ キム・デミョン
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