寄生獣
完結編
これは、傑作コミック「寄生獣」を「永遠の０」の山崎貴監督が実写映画化した第二弾で完結編。
自らをミギーと名乗る寄生生物パラサイトを右手に宿した、高校生の泉新一。
ミギーと共に人々に寄生するパラサイトを次々と倒していった新一は、連続猟奇殺人事件を追う警察からマークされると共に、市役所を拠点にしたパラサイトからも脅威とみなされるようになっていた。
だが、パラサイトたちのリーダーの一体、田宮良子は、人間とパラサイト、両者の自我を有する希有な存在である新一に可能性を感じ、新一への攻撃を抑えていたが……
「寄生獣」の映画化には懸念もあったのですが、前編はまずまずの出来映えと思いました。だけど、この完結編はちょっと風呂敷を畳む事に専念した感があり、物語の広がりを失ってしまった感があるのは残念。
それでも、広川の演説にあるように現代社会と人間に対する第三者的目線の批判を入れるなど、前作を引き継いでいるよい部分はあるのですが、途中から寄生生物自身が「人類の天敵」から「弱い存在」と自ら言ってしまい、脅威を縮小させてしまったのもの如何なものか、と……
また、広川の演説はいいとしても、田宮良子の最期は、確かにここが事実上のクライマックスであるにせよ、言葉が多すぎた感があります。
一部で話題となっていた橋本愛の濡れ場は、恐らく橋本愛、最大限の頑張りを見せています。若手人気女優の彼女にここまでさせた辺り、製作陣も頑張った、と言えるでしょう。
一方で物足りなかったのは、新一が後藤との決戦に臨むシーン。これは原作中で最も印象的なシーンだったので、何とも残念。あれは、巻き込まれるのではなく、とてつもなく重いものを背負って静かな覚悟を決める、そうした描写が欲しかった所です。
この映画で気になったのは後半に集中しています。
まず、後藤との対決シーンの、あの改変。既に抗議も受けているようですが、あれはさすがにダメでしょう。環境問題をモチーフにした本作だけに、初代「ゴジラ」のような“放射能の恐怖”を盛り込みたかったのでしょうけれど……
また、市役所の掃討と後藤との対決を最後に、あたかも事は終わってしまった、とするようなエピローグも受け入れ難い。全人類が直面すべき問題をブチ上げておいて、これはあんまりだ、と思ってしまいました。
そして、最大の問題はラストにありました。懸念していた通り、山崎貴のキレの悪さ全開。
「永遠の０」だって破綻寸前でしたが、この映画、最後の最後で映画をダメにした感がある。
だらだら長く、感動を強要するような回想シーンを入れ、最後はほのぼのを終わらせようとするのだが、その屋上には殺人鬼と襲われた瀕死の被害者がいる筈で――そこでのんびり空など見ていていいのか？と……気が気じゃない有様。
これには最後にがっくり。一気に映画の印象を悪くした感があります。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
泉新一 ・・・ 染谷将太
ミギー ・・・ 阿部サダヲ
田宮良子 ・・・ 深津絵里
後藤 ・・・ 浅野忠信
（その他のキャスト）
橋本愛 新井浩文 岩井秀人 山中崇 ピエール瀧 豊原功補
大森南朋 北村一輝 國村隼
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