想いのこし
これは、岡本貴也の小説「彼女との上手な別れ方」を、「ツナグ」の平川雄一朗が映画化したもの。
この世に未練を残し、成仏出来ないでいる人たちが想いを伝える物語です。
金と女にしか興味がないダフ屋稼業のガジロウの前に、彼と起こした交通事故で死亡したポールダンサーのユウコら４人の幽霊が現れた。
この世に「想いのこし」た事があって、成仏できないでいる彼女たちは、ガジロウにその「想いのこし」た事をやってくれと半ば無理やり頼み込むのだが……
この映画、成仏出来ずにこの世を彷徨う霊魂……つまり、幽霊の出て来る怪談なのですが、これはまるで怖くない幽霊譚。
「黄泉がえり」に始まり「ツナグ」や「トワイライト ささらさや」に続く系列の、「泣ける」幽霊映画となっています。
物語の狂言回し役のガジロウは岡田将生。この映画では、女装しての花嫁姿からポールダンスまで体を張った活躍を見せていますが、悪ぶっても人のよさが顔に出てしまう感じが物語を先読みさせてしまうのが惜しい。
どうせなら、幽霊となった――でも、ガジロウには生身の人間と変わらない――ユウコらの身体を求めるくらいの下衆っぷりを見せて欲しかった所です。
シングルマザーのポールダンサーのユウコ役の広末涼子は、すっかり母親姿が板について来ましたが、その一方、若い２人の女優と比べても見劣りしない若々しさもまた広末らしい所です。
ポールダンサーと言う設定は、原作でストリッパーだったのを改変したもののようですが、これはレイティングを考えれば仕方のない所でしょう。
（幸太郎のいじめられる理由がちょっと不自然になってしまいましたが……）
目立たぬようにワイヤーを使ったポールダンスはなかなかの見物で、「軽蔑」の鈴木杏のポールダンスよりずっと様になっていました。この辺りは、演出を含めた見せ方の上手さを感じた部分です。
この映画、観客を「泣かせる」狙いはミエミエで、少々（かなり？）あざとい作りとも言えるのですが、そうして斜に構えて見ていても、それでも「泣ける」仕上がりになっているのには、さすがに参りました、と言う感じです。
もっとも、いかに「泣ける」とは言え、４つものエピソードを重ねた構成はいささか煩雑に感じましたし、ガジロウがどのように変わって行ったのかの描写が希薄だったのも物足りません。それに、いかに想いを適える為とは言え、残した金を、何であんなろくでなしに……と言うのも気になる所。
（あんな男に全額渡すくらいなら、遺された婚約者や家族にいくらかでも渡した方が……と）
映画としてはコミカルで笑える部分も多く、それでいて４人も死んでいると言う所にいささかの不自然さ――死んだ４人の葬儀が合同で行われる、とか――と、腑に落ちないものも感じました。
また、消防署員だった人物が、どうしてポールダンサーのマネージャーになったのか、また、現役高校生が、風俗店に分類される店でポールダンサーとして働けるのか、と言うあたりの設定にも納得出来ず……物語としては決して悪いものではないので、こう言う部分を詰めてくれると、映画としての完成度が高まるように思うのですが……
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
本多ガジロウ ・・・ 岡田将生
笠原ユウコ ・・・ 広末涼子
円山ルカ ・・・ 木南晴夏
犬塚ケイ ・・・ 松井愛莉
明珍ジョニー ・・・ 鹿賀丈史
（その他のキャスト）
巨勢竜也 高橋努 川籠石駿平 佐藤二朗 村杉蝉之介
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