| イン★ザ★ヒーロー ＩＮ ＴＨＥ ＨＥＲＯ |
これは、特撮ヒーローものを影で支える、スーツアクターにスポットライトを当てた物語。
主演は、実際にスーツアクターの経験もある唐沢寿明。
特撮ＴＶシリーズ「神龍戦士ドラゴンフォー」の映画化が決定、長年スーツアクターを務めて来た本城渉に、“顔出し”での出演オファーが舞い込んで来た。
“顔出し”ならば、家族に仕事ぶりを見せる事が出来るし、日陰者のスーツアクター稼業の後輩たちの励みにもなると、喜んで引き受けた本城だが、直前になって売り出し中の若手俳優・一ノ瀬リョウに役を奪われてしまう。
その上、リョウにアクションを教えてやって欲しいと頼まれた本城は……
映画の裏方の存在にスポットを当て、尚且つ特撮ヒーローものを得意とする東映らしさを活かせる、その狙いが秀逸。特撮ヒーローの裏側を見せる内容には興味深いものもあり、ここぞとばかりに盛り込まれたネタは、マニアを唸らせるものもあるでしょう。
そして、実際に経験のある唐沢寿明は身体も作って、アクションに果敢に挑戦するなど役作りにも力が入っています。
ただし、この映画、これだけの素材と条件に恵まれながら、どうにもピリっとしない印象。
映画のテンポが悪く、だらだらした展開（特に、吾郎の結婚式の描写など、あんなに長く描写する必要はないと思う）に、いまひとつ乗り切れません。
それに、登場人物の設定も類型的で、更に、一ノ瀬リョウの家庭環境とハリウッド・スターを目指す動機は、あまりに現実味がないのではないでしょうか？
それでも、ハリウッド映画のオファーを受ける辺りからは盛り返し、唐沢寿明の熱い台詞も、「クサい」と思えずに受け止められるようになるのですが……クライマックスとなる大立ち回り、あれはダメでしょう。
勿論、確かに熱く盛り上がるシーンである事は否定しませんが、それまでさんざ主張して来た、「段取りとチームワーク」と言う日本特撮のスタイルを否定する、「初顔合わせ同士で、打ち合わせなし、特撮なしの長尺一気撮り」と言うのには、納得出来ませんでした。
（実際、メイキング映像でも、入念な打ち合わせの上で細かくカットを割って、撮影しているのが判ります）
そんな現実離れした、白ける展開になってしまったのも、「鎌田行進曲」を下敷きにしたせいでしょう。
（あの転落のシーンは、あの名シーン“階段落ち”へのオマージュであるのは明白）
アクションシーンを演じる、本物のスーツアクターたちの頑張りも見えますし、これが最大の見せ場なのですから、ここは上手くアレンジを利かせて欲しかった所です。
今年公開された「太秦ライムライト」と似たような内容になってしまった映画ですが、その内容としては、「本物」を見せた「太秦ライムライト」に対し、どうにも納得出来ないもの。着眼点は、本当、秀逸だっただけに、何とも勿体ない仕上がりの映画でした。
（２０１４年 ９月 ６日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
武正晴
■出演
本城渉 ・・・ 唐沢寿明
一ノ瀬リョウ ・・・ 福士蒼汰
海野吾郎 ・・・ 寺島進
（その他のキャスト）
黒谷友香 草野イニ 日向丈 小出恵介 及川光博 杉咲花
イ・ジュンイク 加藤雅也 松方弘樹 和久井映見
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オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ 夢は必ず叶うってことを
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