マレフィセント
これは、童話「眠れる森の美女」で、姫に呪いをかける悪しき妖精マレフィセントを主人公に、妖精の国側の視点から物語を再構築した異色のファンタジー映画。
翼のある妖精マレフィセントは、ある日、妖精の国に宝石を盗みにやって来た人間の少年ステファンと出会う。
説得されて宝石を返したステファンだが、彼は代わりにマレフィセントの心を盗んでいった。恋に落ちたふたりだが、その愛情は長く続かなかった。
成長し、王になる野望を胸に、妖精の国を征服しようとするヘンリー王に仕える身となったステファンはある企みを抱いて森にやって来て……
マレフィセントを演じるのは、「ソルト」以来の映画主演となるアンジェリーナ・ジョリー。
妖精の国を統べる威厳と、美貌、それに慈愛を体現する彼女は正にはまり役でしょう。
また、裏切られた絶望により破滅的な生き方をするものの、歳を重ねて血の繋がっていない子供を愛情深く育てるようになる……と言う展開も、アンジーに宛て書きしたような内容ではないでしょうか。
（しかし、男女間に真の愛はなく、親子の間にこそある、と言う内容、ブラッド・ピットはどんな顔して見ていたものやら）
一方、純粋で愛らしいオーロラ姫には、エル・ファニングがこれまた好演していますが……比べてしまうといささか野暮ったく感じられてしまうのは仕方のない所でしょう。
また、幼少時のオーロラ姫を演じたのはアンジーの実娘のヴィヴィアンで、いかにも気の強そうな面構えは、やはり母親譲りの血筋を感じました。
「アバター」の美術を手掛けたロバート・ストロングバーグ監督は、いかにもディズニー的なファンタジーワールドを描き出します。ただ、映画館と３Ｄ（鑑賞したのはＸｐａｎＤ方式）のせいもあると思いますが、暗いシーンが多くて見辛く、また、妖精の国は、ソフトフォーカスで描かれている為に、ピントがあっているのかどうか判別し辛く、目が疲れてしまいました。
映画は、「眠れる森の美女」のリメイクにして再構築ですが、この改変は相当に思い切ったもの。
恐らく、「きれいは汚い、汚いはきれい」でおとぎ話の世界観をひっくり返したドリームワークスの「シュレック」と、最近のおとぎ話の実写化（「スノーホワイト」など）を意識したのだとは思いますが、ディズニーの得意とするおとぎ話のセオリーを、ディズニー自ら崩そうと言うのですからこれは思い切っています。
「アナと雪の女王」でも、クライマックスでセオリー崩しをやってはいましたが、続く本作もこう来るとは……
“王子様”を否定し、男女間の愛は「真実の愛」ではないと切って捨て、「アナと雪の女王」では姉妹愛、本作では親子愛（それも母と娘）を描き、女だけで物語は動かせる、と言う、その「新方針」（？）は、確かに、ディズニーブランドを信奉する女性には強くアピールするでしょうけれど、男の身としては、いささか複雑な想いを抱かされました。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
ロバート・ストロンバーグ
■出演
マレフィセント ・・・ アンジェリーナ・ジョリー
オーロラ姫 ・・・ エル・ファニング
（その他のキャスト）
シャールト・コプリー レスリー・マンヴィル イメルダ・スタウントン ジュノー・テンプル サム・ライリー
ブレントン・スウェイツ ケネス・クラナム ハンナ・ニュー イゾベル・モロイ マイケル・ヒギンス
エラ・パーネル ジャクソン・ビューズ ヴィヴィアン・ジョリー=ピット エレノア・ワーシントン=コックス
ジャネット・マクティア
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誰も知らない「眠れる森の美女」がいま目覚める――。
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