アナと雪の女王
これは、アンデルセン童話の「雪の女王」をモチーフにしたディズニーアニメ。
アレンデール王国の王女として生まれたエルサとアナの姉妹。
姉のエルサには雪や氷を作り出す能力があったが、ある日、その力でアナを傷つけてしまう。その日以来、国王は、城門を閉ざし、エルサとその能力を封印してしまう。
やがて、国王と王妃も死去し、成人したエルサが戴冠の日を迎えたその日・・・
この映画、ディズニーアニメとして久々の本格ミュージカル。トニー賞受賞のロバート・ロペスが楽曲を担当、同じくトニー賞受賞女優のイディナ・メンゼルをエルサ役に起用。その２人による劇中歌「Ｌｅｔ ｉｔ ｇｏ」はアカデミー賞にも輝きました。
勿論、アニメーションの方も文句のない出来映えで、キャラクターなどは昨年の「シュガー・ラッシュ」の延長線上にあるものとは思いますが、リアルさとかわいらしさのバランス、表情の豊かさなど、その描写はＣＧアニメとして最高峰にあるのは間違いないところ。そして、よく動き、それでいて目まぐるしくないアクションなど、完成度は非常に高いです。
それら組み合わせによる映像美は素晴らしく、特に１曲丸ごと予告編で使われた「Ｌｅｔ ｉｔ ｇｏ」は、ひとりの女性が、抑圧から解放されて己を解き放つ、感動的な内容もあって、これは幾度観ても飽きる事なく、また、幾度観てもその度に感動させられます。
しかし、これが１本の映画としてどうか、と言われると、そうとも言えません。
（前述した「Ｌｅｔ ｉｔ ｇｏ」だって、歌詞の内容を要約すると「引き籠もりの開き直り」なんですよね・・・こんなんで感動していていいものかどうか）
勿論、「真実の愛」を手にするまでを描く、ディズニープリンセス映画の基本フォーマットに則って作られた映画であり、最後にハッピーエンドが約束されている物語に揺らぎはありませんし、脇を固めるトナカイや雪だるま、トロールと言ったキャラクターによる賑やかで楽しい雰囲気の演出も手慣れたもの。
それでも尚、この映画、ストーリーがどうにも上手く転がっていない印象を受けます。
まず、プリンセスをアナとエルサ、２人に分けたのが問題でしょう。
そのため、制御出来ない力に悩む、と言うエルサの物語を描き切れず、そこに、王国を簒奪しようとする南諸島の王子と言うキャラクターを持ち込んだものですから、更に物語が迷走したように思えます。
ミュージカルシーンも、それ自体は素晴らしいものではあるにせよ、ストーリーに関係のないオラフやトロールのものは、物語の流れを阻害するので苛々させられましたし、「王子様のキス」で終わらない、定石崩しのクライマックスも効果的とは思えません。
（定石崩しも結構ですが、定石とは、最善の策だからこそ定石なのです）
この物語、もっと人物配置をシンプルにし、エルサと「氷の心を知る」氷売りのクリストフの物語にすべき内容だったのではないでしょうか？
確かに、アニメーション描写としては素晴らしく、ミュージカルとしても楽しめます。だからこそ、物語の方も頑張って欲しかったのですが・・・その頑張る方向がちょっとズレていたように思いました。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
クリス・バック／ジェニファー・リー
■出演
アナ ・・・ クリステン・ベル
エルサ ・・・ イディナ・メンゼル
クリストフ ・・・ ジョナサン・グロフ
（その他のキャスト）
ジョシュ・ギャッド サンティノ・フォンタナ アラン・テュディック キアラン・ハインズ クリス・ウィリアムズ
■コピー
凍った世界を救うのは――真実の愛。
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