「冷静と情熱のあいだ」

　定時日の月曜、いつものように映画館、それでもって「冷静と情熱のあいだ」を観て来ました。
　これは、江國香織と辻仁成による原作小説を、竹野内豊とケリー・チャン主演で映画化したもの。
　原作はふたりの著者が、男女ふたりの主人公それぞれの立場から交互にひとつの物語を綴っていくというスタイルで、月刊「カドカワ」誌にて連載されて話題となり、単行本は５０万部を越えるベストセラーになったそうで、映画の方も公開されるや人気を集め、夏から興行成績トップを突っ走る「千と千尋の神隠し」をトップの座から引きずり降ろしてしまいました。

　男女二人の主人公を、男女二人の作家が、それぞれの立場で同じ物語を進めて行く、と言う独特のスタイルが話題となった原作だけど、映画の構成はそれ程個性的なものではなく、主として竹野内豊が演ずる阿形順正の立場から語られていく。
　（ある意味、辻仁成が書いた「Blu」の映画化、と言えるかも知れない）
　フィレンツェで美術品の修復士として働く順正は、大学時代の友人から、昔の恋人、あおいがミラノで暮らしていると知らされる。彼女と気まずい別れをした後、ずっと忘れられずにいた純正はすぐにミラノに行くが・・・物語はここから回想シーンなどをはさみ、１０年に渡る二人の恋の軌跡を描き出していきます。

　この映画に描かれるのは、ごく普通の恋愛のプロセスです。
　出会いのときめき。初デートの緊張感。幸せが永遠に続くかに思える恋の喜び。
　そして、別れと、別れた後も心の底に残る愛の甘美な記憶・・・
　それは、多くの人に経験があるだろうし、感情移入もし易いでしょう。
　そして、映画は偶然の再会を描きます。
　忘れたはずの想いが心の中に蘇り、順生は、正に修復士として、忘却の埃を払い、想いを、色鮮やかに蘇らせます。
　そして、順生は思い出すのです。
　「あおいの３０歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモ（大聖堂）で逢う」
　と言う、１０年前の約束を・・・

　物語は、１０年に及ぶ長い時間を回想シーンを交えて描くのだけれども、意外に混乱はしません。
　監督の中江功は、これが初の映画だと言うけれど、元々、ＴＶドラマの演出歴が長いそうで、ドラマ作りは判りやすく、手慣れたものを感じました。

　竹野内豊は、美形と言うよりかわいい感じのする俳優で、演技の方は少々、不器用な印象があるのですが、この順生と言う役柄には合っていたかな。
　あおいのケリー・チャンは、ちょっと柴咲コウにも似た感じのキツめの美人で、すっぴんの時はともかく、化粧をするとキツと言うか、ちょっとコワい。
　（このテの顔立ちは濃いめのメイクだと、ほんと顔がコワくなるのよ(^^;）
　その為、ちょっと引いてしまって、恋愛ドラマに乗り切れなかったのが残念でした。
　（やはり、この種のラブストーリーは擬似的にでも恋愛感情を抱けるか、と言うのが映画世界に入れる、入れないと分けるような気がする）
　しっかし、篠原涼子は、最近、必要以上にお色気過剰な役をやってるなぁ。

　ドラマのテンポはゆっくりめで、しかも最後は延々と結末を引っ張る。
　それでいて、最後はスッパリ裁ち落とし、観客の心の中に余韻を残す手腕はなかなかのもの。
　竹野内豊かケリー・チャン、どちらかに感情移入して観ることが出来れば（私は残念ながらちょい引いた(^^;）これは、結構、イケるラブストーリーだと思います。

　（１１月１９日　ＷＭＣつきみ野にて）

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