ＴＨＥ ＮＥＸＴ ＧＥＮＥＲＡＴＩＯＮ
― パトレイバ− ―
| 第１章 | エピソード０：栄光の特車二課 |
| エピソード１：三代目出動せよ |
これは、「機動警察パトレイバー」シリーズの久々の新作にして初の実写映画。
１９８８年に始まった「機動警察パトレイバー」は、コミックス、ＴＶアニメ、ＯＶＡ、小説、映画と幅広いメディアで作品化された、“メディアミックス”の先駆者とも言える作品でした。
今度の新作は、最近流行の“リブート”ではなく、２００２年の「ＷＸIII」を最後に休止したシリーズの続編に当たるものとなっています。
警視庁警備部に特殊車両二課が設立され、“パトレイバー”の運用が開始されてから十余年が過ぎた２０１３年の東京。
バビロン・プロジェクトは完了し、また、その後の日本を襲った長期不況により、金食い虫のレイバーがすっかり街から姿を消してしまった結果、レイバー犯罪は激減。特車二課も第一小隊は解散となり、第二小隊のみがレイバー運用経験の継続の名の元に辛うじて存続していた。
既にメーカーの保証も切れ、パーツ供給も滞りがちになっている現状では、訓練もろくに出来ず、特車２課は、いつ来るか判らない出動を待って、ひたすら待機の時間が続いて・・・
「ハイパーテクノロジーの急速な発達によって登場した汎用人型作業機械「レイバー」。それは同時にレイバー犯罪と言う新たな脅威を生み出す事になった――」と言う、今や懐かしい台詞で始まる物語は、物語の中でも十余年の時間が過ぎ、９８式ＡＶ「パトレイバー」もすっかり過去の遺物になっています。
そして、ロボットが主役のはずの映画で、事もあろうにのっけから「二足歩行ロボット不要論」を、押井節でブチ上げるのです。
アニメシリーズも監督していた押井守は、そのミリタリー趣味から、兵器として、二足歩行ロボットがものの役に立たないことを承知していた（それは劇場版「パトレイバー２」で描かれます）のにも関わらず、ロボットアニメの「お約束」としてカッコいいロボットが活躍する物語を作らされた、と言う過去があります。
今度の実写版は、コミックスやアニメの「お約束」ではなく、実写であり、リアルにやる以上は好きなようにやらせて貰う、と言う押井守の気持ちが入り過ぎているくらい入っているのは、もう「エピソード０」の時点で判ってしまいました。
そうして描かれる本編は何時来るか判らない出動を待つ、ただ怠惰な待機と、飯と、繰り返される無駄話・・・と言う展開。
まぁ、こう言うのが押井守の映画なのだ、と判っているファンならともかく、「カッコいいロボットもの」を期待して来た観客を裏切るものであることは間違いありません。
これに続く、２話、３話もパトレイバーは活躍しそうになく・・・なるほど、こりゃ上手いことやったものだ、と思いました。これなら日本でも実写版のロボットものが出来る訳です。
とは言え、見所は多く、リアルに、存在感ばっちりに作り込まれたパトレイバーと、整備棟のセットは見事であり、今回の映画で唯一ロボットものらしい展開を見せた、出動シークェンスの描写はなかなか。
日本の特撮ものでもここまでやれるのだ、と言う見事な描写となっています。
また、今回の敵役はなんと「クラタス」！これにはちょっとウケてしまいました。
主演の真野恵里菜は可愛らしくも凛々しく、コックピットに収まる姿は「パトレイバー」の実写版としての期待通り。その他キャストもまずまずなのですが・・・ちょっと気になったのは、せっかく、続編にしたのに、アニメシリーズと被るキャラクターにするばかりか、名前まで似せているのは如何なものか、と。
せっかく、続編として、違う設定で描いているのですから、そうした配慮は不要でしょう。このキャラクターでやりたかったのなら、何故、リブートにしなかったのだ？と思ってしまいました。
実写版は、この後、１２話まで製作され、それを７章に分けて劇場公開され、更に２０１５年には劇場版の長編も企画されているとのことですが、このまま最後まで怠惰な日常を描いて行くのか、或いはこれから盛り上げてくれるのか・・・とりあえずは期待して観て行きたいと思います。
（２０１４年 ４月 ６日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■総監督
押井守
■監督
田口清隆（エピソード：０）、押井守（エピソード：１）
■出演
泉野明 ・・・ 真野恵里菜
塩原佑馬 ・・・ 福士誠治
シバシゲオ ・・・ 千葉繁
後藤田継次 ・・・ 筧利夫
カーシャ（エカテリーナ・クラテヴナ・カヌカエヴァ） ・・・ 太田莉菜
大田原勇 ・・・ 堀本能礼
山崎弘道 ・・・ 田尻茂一
御酒屋慎司 ・・・ しおつかこうへい
（その他のキャスト）
藤木義勝
■コピー
無能の三代目、出動なるか!?
■Ｌｉｎｋ
［戻る］