「ロック・ユー！」

　週末の金曜、会社を上がった後で、レイトショーで「ロック・ユー！」を観て来ました。
　中世ヨーロッパの騎士の「馬上槍試合」をテーマに、クイーン、デヴィッド・ボウィ、エリック・クラプトン、ＡＣ／ＤＣなどのクラッシック・ロックで彩った異色の映画。アメリカでは良好な興行成績を残したようですが、日本での公開は僅か２週間で、気が付けば最終日。そんな訳で慌てて観て来ました。

　中世ヨーロッパで、貴族・平民共に楽しんだ武術試合。
　その花形が、馬上槍試合だ。
　甲冑に身を包んだ騎士が長槍を携えて騎馬にうち跨り激突する。
　この競技に出場出来るのは爵位を持つ騎士だけ、平民に出場は許されない。
　しかし、老騎士・エクターの従者のウィリアムは平民でありながら、試合中に急死したエクターの代役を務めて勝利を収めたのをきっかけに身分を偽り、ゲルターランド出身の騎士、ウルリック・フォン・リキテンシュタイン卿と名乗って各地の武術試合に出場、連戦連勝していく。
　その中で美しい貴族の娘と恋をし、ライバルとなるフランスの傭兵隊長と出会い、更には身分を偽って試合に出場していたエドワード王子と槍を交わし・・・一人前の騎士に成長したウィリアムは世界選手権出場の為、故郷・ロンドンに凱旋するのだが・・・

　この映画は、歴史ものと言うよりも、ひとりの若者が競技を通じて仲間を作り、恋をし、そして成長し、成功すると言うスポ根映画の色合いが強いです。
　エドワード王子や、実在の文筆家、チョーサーを登場させ、現実との接点を持たせているけれど、史実から離れ、風俗なども大胆に改変しています。
　それはオープニングからはっきりしていて、クイーンの「We Will Rock You」に合わせ、競技場の観衆が手拍子を打ち、声を合わせて謳う。
　これは、中世と言う閉塞社会を舞台に、現在にも通じる若者の成長を描いた青春映画なのです。

　映画の見所は何と言っても馬上槍試合。
　騎馬で突撃し、すれ違い様に相手の騎士を槍で突くのですが、凄まじい衝撃に木製の槍が、まるで爆発するように砕けるのは迫力満点。
　今まであまりメインに取り上げられることのなかった競技ですが、単純な繰り返しになりかねない槍試合を、迫力と緊迫感溢れるタッチで捉えた演出は見事で、見応えがありました。

　主役のウィリアムを演じるのはヒース・レジャー。
　貴族の娘、ジョフリンを演じたシャニン・ソサモン（これがデビュー作のシンデレラ・ガール！）共に、初々しい演技を見せています。
　脇役陣も個性豊か。
　「フル・モンティ」のマーク・アディ、「ダーク・シティ」のルーファス・シーウェル、チョーサーを印象的に演じたポール・ベタニー。
　あと、女鍛冶屋、ケイトを演じたローラ・フレイザーは、今まで可憐な娘役が多かったけど、一気におばさんになっちゃったねぇ。(^^;

　ドラマはオーソドックスに、見え見えの展開で進むのだけど、だれるような部分もなし、笑える部分も随所に散りばめて、まったく飽きさせる所がない。
　クライマックスにある危機とそこからの解放は、これも見え見えの伏線があるので予想の出来る（と言うより、今か今かと待っているような心境）ものなのだけど、この映画はそれが逆に気持ちいいくらい。
　「本当に信じれば運命だって変えられる」
　そう信じて、本当の、本物の騎士になってしまうラストには感動します。

　しかし、この映画が上映僅か２週間なんて・・・納得いかないぞぉ。

　（１０月１９日　ワーナーマイカルシネマズみなとみらいにて）

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