ＣＨＲＯＮＩＣＬＥ
クロニクル
これは、弱冠２６歳（当時）のジョシュ・トランク監督による低予算映画ながら、公開時には全米１位となって注目された異色の青春映画。
もっとも、低予算映画とは言え、製作費は１２億円と言いますから、そこはさすがハリウッド。日本で言えば大作の予算で、ＣＧなどのレベルもまずまず。チープな印象は余りありません。
主演のデイン・デハーンは、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」での注目された若手俳優で、暗くひねた目つきが印象的。この役柄には正にベストマッチでしょう。
高校生のアンドリューは、成績でもスポーツでもぱっとせず、友達もいない孤独な少年だった。
そんな彼の楽しみは、貯金をして買った中古のビデオカメラ。撮影した映像を自室で見る時、アンドリューは漸くイジメられる恐怖から離れて世界に向き合えるのだ。
ある日、親戚のマットに誘われたアンドリューは、校内の人気者で生徒会長候補のスティーブと、空き地に開いた謎の穴に潜り込んだ。
そこで触れた謎の物質により、３人は物体を触れずに動かせる超能力を身につけてしまう。
アンドリューは意外な才能を発揮、その力を伸ばして行く。
最初は、スカートめくりやスーパーマーケットでのイタズラなど、他愛ない遊びにふけっていた３人だが・・・
イジメられっ子が超能力を身につけ、にわかに注目されるようになる・・・と言う話は、殆ど「スパイダーマン」。これで、正義の味方になってしまうのならばマーベル・コミックスですが、この映画では、得た能力がどんどん拡大して行き、人の道を踏み外して行く、と言う辛口の展開。
大体、高校生なのですからまだまだ自制も身についていないのに加え。病気の母親に、父親のＤＶもあって家庭内に居場所なく、友人もいないアンドリューには、暗黒面に墜ちるの歯止めになるものがないのです。
強大な力こそ、正しく用いなければならず、その行使には責任が伴う・・・と言うテーマは重く、そのドラマを描き切るドラマもまたしっかりしたもの。
これは見応えのある映画で、全米初登場時１位と言うのにも納得出来ます。
また、この映画、全編が記録映像によるＰＯＶ、と言う面白い絵作りをしています。
最初は、ビデオオタクのアンドリューのカメラ映像に始まり、前半部では、それに校内のビデオブログマニアのケイシーのカメラ映像が入る程度。やがて、念動力を自在に使えるようになると、アンドリューがカメラを自在に動かして撮るようになり、終盤の騒動時には、ＴＶカメラや監視カメラ映像の視点になります。
その手法は、類似の手法をとった「エンド・オブ・ウォッチ」より考えられ、違和感の少ないものになっています。とにかく、そこにない位置にカメラを置かない、と言う事は徹底しており、その映像自体が、主人公の立場を示して行く・・・と言う、なかなか面白い試みだと思いました。
（２０１３年 １０月 ４日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
ジョシュ・トランク
■出演
アンドリュー・デトマー ・・・ デイン・デハーン
マット・ギャレティ ・・・ アレックス・ラッセル
スティーブ・モントゴメリー ・・・ マイケル・Ｂ・ジョーダン
ケイシー・レター ・・・ アシュレイ・ヒンショウ
（その他のキャスト）
マイケル・ケリー
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