モンスターズ
ユニバーシティ
これはピクサーのＣＧアニメ「モンスターズ・インク」の前日譚となる物語。
最近流行の“エピソード０”です。
チビでギョロ目のモンスター、マイク・ワゾウスキは、仲間外れの味噌っかすが定位置の孤独な子供だった。
そんな彼の夢は、誰よりも恐ろしい“怖がらせ屋”になること。その為、誰よりも勉強し、遂に憧れのモンスターズ・ユニバーシティに入学し、怖がらせ学部の学生となった。
そこで、彼は、名門サリバン家の出身で、素質と才能に恵まれたジェイムズと出会う。
エリート臭ぷんぷんのジェイムズに、マイクは反発。対抗意欲を燃やして、勉強に励むのだが・・・
努力家のマイクが天才・ジェイムズと出会い、最高の親友で最高の仕事仲間になるまでを描く話ですが、こうした、反発していた２人がお互いを認めて親友に、と言う話、アメリカ映画には多いのですが、それだけに手慣れた感じは正にお家芸。この辺りの巧さは、日本映画にはちょっと真似出来ない部分かも知れません。
また、モンスターたちの大学生活を、決して突飛ではなく、ありがちなものに描いているのも面白い。
校内のエリートたちと、落ちこぼれグループが対立し、最後には大逆転、と言う構成も、正に青春映画の王道、と言う感じです。
しかし、さすがはピクサーと言う部分なのでしょうが、この映画、アメリカ映画らしからぬ部分があります。
中盤、落ちこぼれたちが実力をつけて行く部分を音楽で一気に見せる（これもアメリカ映画のお家芸）ようなことをしないのも定石外しですし、最大のポイントは、主人公に夢を諦めさせてしまうこと。
どんなに努力しても届かない夢がある、と言う残酷な現実をマイクに認識させてしまう所は、サクセスストーリーを本領とするアメリカ映画らしからぬ所。
でも、現実に直面したからこそ、見えるものがある。
同様に、素質に恵まれながらも名門のプレッシャーに押しつぶされそうになっていたジェイムズの本当の姿を知った時、マイクの第二の人生が始まるのです。
それは、「自分は最恐のモンスターにはなれない。でも、２人なら最恐のモンスターになれる」と言うこと。
マイクは、ジェイムズの裏方として、その演出でジェイムズを最恐のモンスターにする道を選ぶのです。
夢を諦め、現実と折り合って生きる・・・人生とはままならないものだけど、そこを僻んでも仕方ない、と言う、微妙なテーマを描いてしまうこの映画。
これは、決して子供向けではないテーマを持った映画だと思います。
PS
尚、日本語吹き替え版でマイクの声を当てているのは爆笑問題の田中裕二ですが、天才・太田光の相方として、常識人に徹する“普通の人”田中裕二は、今回の映画で描かれるマイクの人生に自分を重ねる部分があるんじゃないかなぁ、と思います。
（２０１３年 ７月１２日 １０９シネマズクランベリーモールにて）
（作品データ）
■監督
ダン・スカンロン
■出演
マイク・ワゾウスキ ・・・ ビリー・クリスタル
ジェイムズ・Ｐ・サリバン ・・・ ジョン・グッドマン
（その他のキャスト）
スティーヴ・ブシェミ ヘレン・ミレン ピーター・ソーン ジョエル・マーレイ ショーン・P・ヘイズ デイヴ・フォーリー
アルフレッド・モリーナ チャーリー・デイ ネイサン・フィリオン オーブリー・プラザ ジョン・クラシンスキー ビル・ヘイダー
■コピー
モンスターよ、大志を抱け。
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