マレーナ

　今日は朝、６時に起きたら曇りで小雨がパラパラ。（習慣とは言え、平日には７時まで目が覚めないのに、日曜になると６時前に目が覚めるのはなんとも(^^;）
　仕方ないので、そのまま９時過ぎまで寝て、それから映画を観に行きました。

　映画は、「海の上のピアニスト」に続くジュゼッペ・トルナトーレ監督の最新作、「マレーナ」。
　第二次大戦中のイタリア・シチリアを舞台に、マレーナと言う女性の生き様を、彼女に憧れる少年の目を通して描いた作品です。

　主人公レナートが、マレーナに出会ったのは１２歳の時。
　マレーナは、その美しさで町中の男たちを虜にし、女たちからは嫉妬の目で睨まれる存在。
　マレーナが町を歩くと、男たちは「すごい尻だ」と、無遠慮に見つめ、女たちは「下品で、ふしだらな女」と眉をひそめる。
　レナートは、たちまち彼女に魅了され、恋い焦がれるようになる・・・

　映画の舞台はシチリア。
　美しい街並みと海が描かれますが、想い出のドラマと言う描写からでしょうか、全体的に黄色がかった色調にされ、埃っぽさが目立ちます。
　その中で輝いているのが、やはりマレーナ。
　この映画、マレーナの存在感が最も大事な訳ですが、マレーナを演じたモニカ・ベルッチはその点で完璧。
　ソフィア・ローレンの再来とも言われる女優ですが、成る程、肉感的で、成熟した女性の魅力たっぷり。
　レナートや級友の悪ガキだけでなく、町中の男がみな振り返ると言うのにも納得です。

　映画前半は、年上の女性に憧れる少年の姿を、あけっぴろげに描いて行きます。
　彼女に近付きたい。話をしたい。そばにいて、守ってあげたい。
　しかし、２０代後半の成熟した女性で、しかも人妻のマレーナに、１２歳の少年がなにを出来る訳でもない。
　少年に出来るのはただ見つめるだけ。
　それでも、憧れのあの人にとって、自分は必要な人間である筈（何故なら、こんなにも真剣に恋しているのだから）と言う根拠のない自信を持って、少年は彼女を見つめるのです。
　このひたむきさ、これは男性なら身に覚えがひとつやふたつはあるだろうし、だから、レナートの行為（マレーナが町に出れば後をつけ、夜は自宅を覗きに行き、挙げ句には下着を盗んでオナニーにふける）にも抵抗がない筈（でしょ？）。

　マレーナの悪い噂を胸を痛め、それが嘘だと判ると希望を取り戻す、と言う揺れ動く心の中や、想像の中で繰り広げるマレーナとの恋物語（これが、古い映画のシーンを流用していてなかなか面白い！）など、思春期の少年の胸の内を表す描写もなかなかです。

　後半は、夫が戦死、更に父親を空襲で亡くしたマレーナが、ドイツ軍相手の娼婦となる、と言う苦境に追い込まれ、それでも、見つめる事しか出来ないレナートは恋いする想いを壊され、おかしくなってしまう。
　そんなレナートを見かねた父親が、ガチガチの堅物（この父親は珍しくマレーナの色香にも惑わされないのだ）なのにも関わらず、
　「こんなことは一発、やれば直る」
　と、レナートを売春宿に連れて行くのも面白かった所。
　（親父、こう言う時だけ物わかりよすぎ(^^;）

　そして「男」となった少年は、自分に出来る事の限界を知り、彼女を幸せにする為に、初めて行動を起こします。
　そして、町にマレーナが戻って来て、レナートは初めて彼女に言葉をかけます。
　それが、「別れ」の言葉だったと言うのが何とも切ない。

　かくして少年の初恋は片思いのままで終わるのですが、それが「今までで最も深く愛した女性だった」と回想されるのが何とも憎い所。

　１時間半と言う、比較的短めの上映時間ながら、それ以上の物語の広がりと満足感を感じた１本でした。

　（６月１７日　ワーナーマイカルみなとみらいにて）

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