| スマグラー お前の未来を運べ |
これは、「闇金ウシジマくん」の真鍋昌平のコミック「スマグラー」を、「鮫肌男とも桃尻女」、「茶の味」、「ＲＥＤＬＩＮＥ」の石井克人監督で映画化したもの。
砧涼介２５歳。役者を目指していたが芽の出ぬまま挫折、ぶらぶらしているうちに勧誘された違法パチンコで３００万円の借金を背負った彼は、金融屋の山岡から、日給５万円のアルバイトを世話される。
そのバイトとは「スマグラー」。
飛びっ切りヤバいブツを輸送する、裏稼業の運送屋だった。
それが、状況に流されるまま何となく生きてきた砧の人生をひっくり返すことになる体験の始まりだった・・・
この映画、冒頭の、“背骨”と“内蔵”の２人の殺し屋によるヤクザ殺害から、クライマックスになる砧の拷問シーンまで、壮絶な暴力シーンが連続します。
これは、相当に「痛い」シーンの連続で、拒否反応を示す人もいるでしょうし、全くもって子供向けではありません。（ＰＧ１２は当然、Ｒ１８でもおかしくない）
しかし、石井監督、この容赦のない暴力シーンを残酷に描きながら、遊びを入れて、笑えるシーンに仕立てているのが何とも・・・まぁ、確かに、それで「面白く」観られるのは事実なのですが。
この拷問シーンの主役となるのは、ヤクザ幹部を演じた高島政宏。これは、もう怪演の域。
上半身、オールドスタイルの軍服、下半身はちょうちんブルマと言うスタイルで砧をハイテンションに責めるシーンは、笑いを通り越して唖然、でした。
また、氷のようにクールなヤクザ組長の未亡人役の満島ひかりの演技も印象に残ります。
この原作は１０年以上前に書かれたもの（映画もその頃に年代設定）ですが、平凡な青年が、突然、闇稼業に引っ張り込まれるという状況設定は、今となってはリアリティを感じられるものでしょう。
この１０年で、闇サイトによる殺人事件を始め、日常の裏を強く感じさせられる事件が多く起き、１０年前にはマンガの世界だった裏稼業がぐっと身近になっています。
そうした、真っ当な人間の住む世界ではない、闇の世界を描きつつも、この映画の正体は意外にも青春映画。
何者でもない、何も持たない若者が、「何か」を成し遂げ、自分が何者かを知る、そのテーマは正に青春映画そのものでした。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
石井克人
■出演
砧凉介 ・・・ 妻夫木聡
ジョー ・・・ 永瀬正敏
山岡有紀 ・・・ 松雪泰子
田沼ちはる ・・・ 満島ひかり
“背骨” ・・・ 安藤政信
（その他のキャスト）
阿部力 我修院達也 テイ龍進 島田洋八 高嶋政宏
小日向文世 清川均 松田翔太 大杉漣 津田寛治 寺島進
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