ブラック・スワン
BLACK SWAN
これは、「レスラー」のダーレン・アロノフスキー監督の新作。
ニューヨーク・シティ・バレエ団の新シーズン開幕公演に決まった「白鳥の湖」で、プリマ候補の1人に選ばれたダンサーのニナ。
元バレリーナの母親の期待を背負って、真面目に取り組んで来たニナにとって、どうしても欲しい役だった。
しかし、芸術監督ルノワに、“黒鳥”を演じられる、奔放さや妖艶さに欠けると指摘されてしまう。正に弱点を突かれて、プリマの座を諦めかけた彼女だったが・・・
「レスラー」で老いたプロレスラーの人生とリングの戦いを重ね合わせてみせたダーレン・アロノフスキー監督は、この映画でもプリマの役作りと、母親の重圧や己の貞操観と言った殻を打ち破ろうする様を重ねて描きます。
「白鳥の湖」のプリマは、ヒロイン、清楚な白鳥のオデットと、悪魔の娘のオディールの二役を演じることになりますが、ニナには白鳥は完璧に踊れても、魔性の官能的な魅力で王子を誘惑するブラック・スワンは踊れない。
そうするうちに、控えプリマのリリーが、持ち前の奔放な性格で、ブラック・スワンを見事に踊って見せたことで、ニナはさらに追い詰められて行きます。
そうして、ニナは、徐々に狂気へと追い込まれていく・・・
・・・この展開、どこかで観たような・・・と思っていたら、今敏監督の「ＰＥＲＦＥＣＴ ＢＵＬＥ」ですね。
あの映画も、奥手なアイドルが、女優へ転身を図る中で狂気へ踏み込んでいく・・・と言うものでした。
（実際、ダーレン・アロノフスキー監督は、この映画のリメイク権を買っているそうです）
また、「レスラー」同様、監督、演じる俳優自身を役に重ねています。落ち目の老レスラーと、落ち目のミッキー・ロークを重ねたように、この映画でも、奥手で女性的な魅力に乏しいニナは、いつまで経っても「お嬢様女優」のイメージから抜けきれないナタリー・ポートマンそのままと言ってもよさそうだからです。
映画は、中盤以降、ニナの心理状態のまま、現実か悪夢か判らない狂気の世界に踏み込みます。
それは、心理サスペンスと言うより、すでにホラー映画に近い描写になっています。この辺りの、追い詰められて行くビジョンの中の描写は、恐ろしくも面白い。
その中で、ニナは、自分の行く手を阻む、リリーを殺す。
でも、それは自分の中に封印して来た、自分自身の魔性の部分――それを殺すと言う事はどう言う意味なのか、彼女は身を以て知る事になるのです。
そして、クライマックスでブラック・スワンを打ち破った後に散った白鳥と同様の運命をニナも辿る事になりますが、ニナに重ね合わされたナタリー・ポートマンは、これでオスカーを手にすることになりました。
確かに、ニナに破れなかった、“殻”を打ち破るに相応しい迫真の演技で、これには納得です。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
ニナ ・・・ ナタリー・ポートマン
リリー ・・・ ミラ・クニス
ルノワ ・・・ ヴァンサン・カッセル
（その他のキャスト）
バーバラ・ハーシー ウィノナ・ライダー バンジャマン・ミルピエ
■コピー
純白の野心は、やがて漆黒の狂気に変わる・・・
■Ｌｉｎｋ
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