ビー・デビル
これは、韓国の新鋭、チャン・チョルスによるバイオレンスドラマ。
ソウルで銀行に勤めるヘウォンは、トラブル続きの都会の暮らしから逃げ出すように、子供の頃に暮らした、僅か９人の住民しかいない絶海の孤島に向かった。
島では、幼馴染みのボンナムが変わらぬ笑顔で迎えてくれたが、その笑顔の裏でボンナムは地獄のような苦しみに耐えていた。昼は奴隷のようにこき使われ、夜は男たちの慰み者になる日々。
ボンナムは、ヘウォンの来訪を最後のチャンスと見て、懸命にソウルに連れていって欲しい、とせがむが、都会のストレスから逃れて来たヘウォンには煩わしいだけだった。
そんなある日、更なる悲劇がボンナムを襲い、遂にボンナムの忍耐が限界を迎えて・・・
今年公開の「悪魔を見た」に続く、血まみれの韓国バイオレンス映画ですが・・・醜く、全く救いのない「悪魔を見た」に対し、この映画は、同様に血まみれながら、現代社会と、人間性に対する希望をも盛り込んだヒューマンドラマと言えます。
監督曰く、「藪に潜む蛇が怖いのは、蛇のせいではなく、藪で見えないせい」。
そして、現代人は、見えない危険に気づかないふりをする――そんな、現代人の周囲に対する無関心と言うか、自分が傷つきたくないために他者と距離を置く姿勢が生む問題。
自分が傷つかない代わりに見捨てられ、傷ついた者が復讐の鬼と化し、美しい島を血で染める様を映画は描きます。
そんな復讐の鬼を生んだ、“悪魔”の正体・・・それもまた、人の心が生んだものなのだ、と映画は観客に突きつけます。
流血の量は、韓国映画ならではの過剰さで、終盤、ほとんどモンスターと化したボンナムの暴走っぷりも韓国映画らしいもの。
ただし、罪なき女性が次々殺められる「悪魔を見た」に対し、前半でボンナムを虐め抜いた島民たちが血祭りに上げられるのは、半ば自業自得。ボンナム目線からすれば溜飲の下がるシーンとなるので、流血の割にはストレスなく見られます。
しかも、クライマックスは、ボンナムの刃がヘウォンに向かい、そこからのサバイバルになる、と言うサービス過剰ぶりも韓国映画ならでは、でしょうか。
エピローグは、ソウルに戻ったヘウォンが、弱者を見捨てず、社会に向き合う勇気を得たシーンで締めくくります。
（まぁ、これはこれでやり過ぎの感があるのですが）
目を逸らさない勇気の大事さを訴える、これは意外にも真っ当なヒューマンドラマでした。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
チャン・チョルス
■出演
ヘウォン ・・・ チ・ソンウォン
キム・ボンナム ・・・ ソ・ヨンヒ
（その他のキャスト）
パク・チョンハク ペク・スリョン ペ・ソンウ オウ・ヤン イ・ジウン
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この島で 一体何が起きたのか？
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