ミルク
Ｈａｒｖｅｙ Ｍｉｌｋ
これは、’７０年代のアメリカで、同性愛者としてマイノリティの為に戦った政治家、ハーヴィー・ミルクの最後の８年を描く映画。
監督は、「エレファント」などで知られる、事実に基づき映像で時代を表現し続けるガス・ヴァン・サント。
ミルクを演じるのはアカデミー賞俳優、ショーン・ペン。
１９７２年、ニューヨーク。２０歳年下の青年スコットと恋に落ちたハーヴィー。
会社を辞め、サンフランシスコへと２人で移り住み、カメラ店を開業することになった。
やがて、店には彼の人柄に引かれて多くのゲイが集まるようになる。やがて、ハーヴィーは彼らを束ね、団結する事で力を発揮し始める。
そして、ハーヴィーはより大きな力を得、同性愛者だけでなく、老人や有色人種など、社会から差別され、弱者となっているマイノリティの為に働くべく、政治の世界に進出する事を決意する・・・
映画は、当時のニュースフィルムに始まります。そして、当時の映像と、新たに撮影した映像を巧みに組み合わせ、ドキュメンタリータッチで、尚かつドラマティックに仕上げた辺りはガス・ヴァン・サントの真骨頂。
ただ、この映画、彼の「空」が見られなかったのがちょっと残念。
あと、この映画をＰＧ１２にした男同士のラブシーンですが・・・最初のキスシーンにはぎょっとしますが、まぁ、そう言うものだ、と思えば、綺麗に撮られている事もあり、それほどの嫌悪感はありませんでした。
ハーヴィー・ミルクは、タイム誌が選ぶ「２０世紀の１００人の英雄」に選ばれる程の人物で、その後のアメリカの政治に大きな影響を与えています。
その彼の信念は、
「希望がなければ、人生を生きる価値はない」。そして、「変えられない現実はない」。
だから、彼は、人々に希望を与え、進むべき道を示し、団結して、その道を切り開く事を選択したのです。
その為に、努力と犠牲は惜しまない。それが己の命であっても。
自分は５０歳までは生きられない――恐らく、政敵に暗殺される――と、覚悟して政治家になろうとする人物が、果たして現在、いるでしょうか？
その意味で、確かにハーヴィー・ミルクと言う人物は英雄に相応しい人物だったのだと思います。
そんなミルクが凶弾に倒れた後、３万人以上の市民が、その死を悼んで行進の列に加わりました。
彼らの手には小さな明かり。
ミルクが灯した希望の光がサンフランシスコの市街を埋め尽くすラストシーンには感動します。
PS
エンドロールで、実際のミルク他、実在の登場人物の写真が映されます。
こうした場合、美男美女の俳優が演じる方がよく見えてしまうものですが・・・映し出される彼らは、俳優たちが演じた姿に負けず魅力的でした。
（特に、ミルクの選挙スタッフの中の紅一点、アン・クローネンバーグの美人ぶりにはびっくり。アリソン・ピルよりずっと美人じゃないか・・・）
これも、やはり、彼らが希望を胸に、輝いていた人物だからだろう、と思います。
（５月４日 川崎 チネチッタにて）
（作品データ）
■監督
ガス・ヴァン・サント
■出演
ハーヴィー・ミルク ・・・ ショーン・ペン
スコット・スミス ・・・ ジェイムズ・フランコ
アン・クローネンバーグ ・・・ アリソン・ピル
（その他のキャスト）
エミール・ハーシュ ジョシュ・ブローリン ディエゴ・ルナ ヴィクター・ガーバー デニス・オヘア
ジョセフ・クロス スティーヴン・スピネラ ルーカス・グラビール ブランドン・ボイス
ハワード・ローゼンマン ケルヴィン・ユー ジェフ・クーンズ テッド・ジャン・ロバーツ
ロバート・ボイド・ホルブルック フランク・ロビンソン アラン・ベアード トム・アミアーノ
キャロル・スース・シルヴァー ホープ・ゴブラーシュ スティーヴン・ウィグ アシュリー・テンプル
ウェンディ・キング ケルヴィン・ハン・イー ロバート・キメント ジルベル・マカド
■コピー
「ミルク」は、希望のはじまりだった。
■Ｌｉｎｋ
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