釣りキチ三平
これは、’７３年から１０年、「少年マガジン」に連載されていた矢口高雄の傑作コミック「釣りキチ三平」を、「おくりびと」の滝田洋二郎監督が実写映画化したもの。
秋田の山郷で、和竿師の祖父・一平と共に暮らす少年・三平。
幼い頃に両親を亡くした彼だったが、親譲りの釣り好きに、一平の指導が加わり、その腕前は大人顔負け。
そんな夏休みのある日、三平は、プロの釣師であるバスプロの鮎川魚紳と出会い、意気投合。魚紳は、三平の家に泊まりこむ事になる。
そんな中、東京の大学に通っている三平の姉、愛子が家に帰って来た。
愛子は、三平を東京に連れて行き、東京の学校に通わせようとするのだが・・・
三平に姉がいる、と言うのは意外にも感じられた設定改変ですが、これにより「父探し」と言う原作の持っていた隠れテーマを深化させ、家族の愛情と葛藤の物語を掘り下げる効果を生みました。
実際、父の見た光景を見、父の夢を目前として愕然とする辺りの展開には、思わず涙してしまったほど。
なるほど、滝田洋二郎、巧いものです。
物語は、オリジナルですが、冒頭の鮎釣り勝負は勿論、主題となる「夜泣谷の大イワナ」も、原作のエピソードを元に出来上がっています。
原作マンガではサイドストーリーとして描かれた「謎の魚」への挑戦編から設定を借り、基本の流れは「三日月池の巨鯉」ですか・・・なるほど。
原作の再現も嬉しくなるけれど、美しく、生命溢れる大自然を切り取るこの映像の見事さは、実写ならでは。
この風景と、光と水だけで、これは映画にした価値があろうと言うものです。
残念だったのは、見てそれと分かってしまうＣＧと、アニマルトロニクスで動かす巨大イワナ。クオリティは低くはないとは言え、さすがに違和感がありました。
（３月２９日 ＭＯＶＩＸ本牧にて）
（作品データ）
■監督
滝田洋二郎
■出演
三平三平 ・・・ 須賀健太
三平一平 ・・・ 渡瀬恒彦
三平平 ・・・ 萩原聖人
三平愛子 ・・・ 香椎由宇
鮎川魚紳 ・・・ 塚本高史
（その他のキャスト）
土屋太鳳 小宮孝泰 安居剣一郎 志村東吾 平賀雅臣
山田アキラ 竹場龍生 渡辺栄香 萩原真治 ロバート・ミルズ
佐藤智美 片桐竜次 中西良太 螢雪次朗
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