ポチの告白
CONFESSIONS OF A DOG
これは、日本の警察犯罪事件の実例を元に、良識ある警官が警察組織の悪徳に染まり、自滅して行く姿を通して、日本の警察とそれを取り巻く環境に一石を投じる社会派ドラマです。
これは、２００５年のゆうばり国際映画祭に出品され、好評をもって迎えられたのにも関わらず、内容が内容だけに公開の目処がつかず、完成より３年以上を経った今年、漸く公開される事になったものです。
（・・・と言っても、この映画、映倫すら通らず、数える程の映画館でしか公開されませんが）
映画は、２０００年の東京を舞台に始まります。
所轄警察署で交番勤務の竹田八生は、不器用で、実直な警察だった。
やがて、そんな勤務姿勢が認められ、竹田は、組織犯罪対策課の刑事に選抜昇任することに。更に、プライベートでは娘も授かり、人生の喜びを感じていた。
だが、彼は、その実直さ故に、上司の不透明な命令にも盲目的に従い、気づかぬうちに犯罪行為を重ねてしまう事になった。
そして、５年の月日が経ち、竹田は順調に出世して、組織犯罪対策課の課長として、自ら犯罪行為を進める立場になっていた・・・
公務員による組織的な汚職や違法行為が社会的に追求されると、中堅幹部職員が責任を一身に背負って自殺してしまい、その全貌が隠蔽される、と言う事がよくあります。そして、本当の悪はその背後で、ぬくぬくと生き続けるのです。
そうした組織犯罪の実状と言うのはなかなか見えて来ないものです。
でも、この映画には、こうした公務員による汚職や違法行為の手口がふんだんに盛り込まれています。
架空伝票を使った裏金作り。職権乱用。取引業者（警察の場合は暴力団とマスコミ）との癒着や便宜供与。組織内での不正の隠蔽。隠蔽しきれない不正を一部職員に責任転嫁してのトカゲの尻尾切り。
この映画を観れば、「官僚の犯罪」の実状が具体的に見えてくるのです。
これは、真面目で実直な警察官だった主人公が、警察組織の中で少しずつ汚れていく物語です。
でも、元々彼は「法」に忠実なのではなく、警察という「組織」に対して忠実だったのです。だから組織のために、違法なことにも手を染める。
組織犯罪の場合、上司の命令があり、組織の為、と言う大義名分もあります。しかも、警察の場合、その摘発に当たるのも警察なのだから、組織に忠実でさえいれば多少の違法行為も問題になる事はありません。
そして、違法行為と言う秘密を抱え込むが故に結束し、あたかも疑似家族のような一心同体の組織を作り上げて行く・・・
ただし、それが本当の家族と違う所は、所詮、組織保全と利益で結びついているだけなので、不要と判断されれば、情け容赦なく切り捨てられる、と言う所です。
（もっとも、この映画は、切り捨てられる“トカゲの尻尾”を“犠牲者”としては描きません。彼らもまた、それまでにさんざ甘い汁を吸って来たからです）
でも、これって、宮仕えのサラリーマンにも多かれ少なかれそうした部分があります。
正しい事が何かを知りつつも、組織の為、上司の命令で、それを曲げなければならなくなる事が、いつ、自分の身に降りかかるかもしれないのが、宮仕えの辛さ。
この部分、サラリーマンなら少なくない人が身につまされるのではないでしょうか？
映画は、この不正に立ち向かうフリージャーナリストを登場させ、この問題に立ち向かわせます。
そんな彼らに「この国はもうお終いだ」と呟かせる辺り、製作者の深い絶望が感じられますが・・・実は、そこまで捨てたものではないのかもしれません。
こんな国でも、このような映画が製作する事が出来、それを小規模とは言え公開出来るのですから・・・
（３月１日 新宿・Ｋ’ｓシネマにて）
（作品データ）
■監督・脚本・編集
高橋玄
■出演
竹田八生 ・・・ 菅田俊
（その他のキャスト）
野村宏伸 川本淳市 井上晴美 井田國彦 出光元
水上竜士 宮本大誠 風祭ゆき ガンビーノ小林
木下順介 山下真広 舩木壱輝 新井貴淑 時田望
李鐘浩 蓉崇 河端保成 吉田祐健 岡村洋一
吉守京太 崔哲浩 澤田雅志 藤村忠生 のむらゆみ
塚本博一 新橋鳩美 北村栄基 並樹史朗 朝田帆香（子役）
ハンス・ヴァン・デル・ルフト つじしんめい
宮崎学（特別出演） 寺澤有（特別出演）
■Ｌｉｎｋ
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