チェンジリング
これは、クリント・イーストウッドが監督して描く真実の物語。
１９２８年、ロサンゼルス。
９歳の息子、ウォルターと暮らすシングル・マザーのクリスティン・コリンズはその日、息子をひとり家に残して出勤する。仕事を終えて家に戻るとウォルターは姿を消していた。近所を探しても見つからず、彼女は警察に電話するが、まともに取り合って貰えない。
５ヶ月後、ウォルターを保護した、と言う警察の連絡を受け、クリスティンは駅に向かったが、そこで「息子だ」と引き渡された少年はウォルターではなかった・・・
この映画、予備知識なしでは、その描かれる内容の重さにびっくりするかもしれません。
これは、単純な感動を誘う物語ではなく、超自然的な内容でもありません。そこに描かれるのは、血なまぐさい犯罪と、警察の横暴さにより、市民、特に女性の権利が踏みにじられる、そんな残酷で不合理な現実に敢然と立ち向かうひとりの女性の物語です。
冒頭、イーストウッド監督は、これを「真実の物語」と宣言します。
８０年前、これは現実に起きた事だったのです。その恐怖と理不尽さに、主人公のクリスティンは、母親の力で立ち向かって行く。
子供の為の戦いが、やがて理不尽な横暴さに虐げられている女性を救う事になり、巨大な悪を打ち倒す事になるのです。
この辺りは、正義の人、クリント・イーストウッドの面目躍如。
男ならば意地でぶつかって行く所を、母は、子供への一途な想いでぶつかって行くだけです。
そして、そんな母の息子、ウォルターが、極限の中で行った選択と、それを知った母の表情には感動させられます。
真実により、重厚となった物語に相応しく、映画の完成度も素晴らしい。
細部まで気配りし、迫真のリアリティをもって再現された１９２０年代のアメリカ、ロスの街並みと行き交う人々。
クリスティンを演じたアンジェリーナ・ジョリーは、やや老け顔メイクで、ケバケバしく見える時もありますが、意識的に作られたザラついた映像と合わせ、これも当時の時代を感じさせます。
重苦しい映像と物語に、繊細で優しい音楽をつけてバランスを取る辺りの配慮も心憎いばかりで、この辺りは、さすがはイーストウッド、映画を知り尽くした感じです。
これは、見事な映画でした。
（２月２８日 ＭＯＶＩＸ本牧にて）
（作品データ）
■監督
クリント・イーストウッド
■出演
クリスティン・コリンズ ・・・ アンジェリーナ・ジョリー
グスタヴ・プリーグレプ牧師 ・・・ ジョン・マルコヴィッチ
（その他のキャスト）
ジェフリー・ドノヴァン コルム・フィオール ジェイソン・バトラー・ハーナー エイミー・ライアン
マイケル・ケリー ガトリン・グリフィス デヴォン・コンティ ジェフリー・ピアソン エディ・オルダーソン
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どれだけ祈れば、あの子は帰ってくるの──？
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